就活セクハラを防止するために企業が取るべき措置
2020/02/14 労務法務, コンプライアンス, 危機管理, 民法・商法, 労働法全般
1.はじめに
就職活動中の学生が、志望企業等の社員からセクハラ被害を受けるケースが報道されております。このようなケースが明るみに出た場合、企業の社会的信用が損なわれたり、慰謝料を請求されるなどの法的問題に発展したりすることも想定されます。そこで、就活セクハラの事例、リスク、そして企業が就活セクハラを防止するために取るべき措置を紹介いたします。
2.就活セクハラの事例
厚労省が今年1月に出した、『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』を参考にすると、就活セクハラとは、就活生に対して、①優越的な関係を背景とした性的な言動であって、②採用選考上、必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③就活の妨げとなる行為をすること、の3要件を満たすことといえそうです。
なお、就活生に対しても、指針を適用することが望ましいとして、企業にも努力することが求められています。
具体的に、就活セクハラの事例として以下のようなものが報告・報道されています。
・面接指導と称して、自宅に就活生を連れ込むこと
・OB訪問をした就活生に酒を飲ませ、性的暴行に及ぶこと
・恋人の有無などの、業務に関係のない個人的事項に立ち入った質問を面接官が就活生に対してすること
参考:
○『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』
○OB訪問の女子大学生にわいせつ容疑 大林組の社員逮捕
○住友商事元社員を逮捕 OB訪問の大学生に性的暴行容疑
○大学は就活セクハラ対策を現役学生らが訴え。「前例がない」とスルーされた過去も
○就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例 ※事例6に記載
3.就活セクハラが起こるとどうなるか
・信用の低下
社会の発展やグローバル化に伴い、企業が法令や社会的責任を遵守することが求められるようになりました。以上のことから、社員が逮捕されたり、社員の就活セクハラの事実が週刊誌に掲載されたりすると、その企業の評判が下がることから、株価が下がったり、取引が中止になったりするなどの影響が起こることが考えられます。また、就活の場面で生じたことから、翌年度以降のその会社への志願者が減り、よい人材が集まりづらくなることが考えられます。
・損害賠償請求
採用面接は会社の業務の一環として行われます。OB・OG訪問は、就活生と社員が個人的に連絡を取って行われて業務の一環と言えない場合もありますが、就活生から見ると社員は会社の顔であるため、業務の一環と映るでしょう。そのため、採用面接やOB・OG訪問は「事業の執行」といえ、会社が使用者責任(民法715条)を問われることが考えられます。
加えて、就活セクハラにより、就活生が精神的苦痛を受けた際には、「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」といえることから、就活セクハラを行った社員個人も不法行為責任(民法709条)を問われることが考えられます。
・刑事責任
性的接触が伴う場合、強姦罪(刑法177条)、準強制性交罪(刑法178条)、強制わいせつ罪(刑法176条)などに問われることが考えられます。
また、実際に社員が逮捕された例もあります。
参考:
○「就活セクハラ」採用担当者にホテルへ連れ込まれる被害…どう対処すればいい?
○2017年度「コンプライアンス違反」倒産
4.コメント
では、企業はどのような対策を講じることが考えられるでしょうか。具体的には、以下のような措置を取ることが考えられます。
OB訪問の場面
・OB訪問の時間を、ランチの時間帯に限定する。
・場所は、社員食堂などの会社の施設を使うか、近隣の喫茶店にする。さらに、学生と会う場所を事前に申告させ、会った後には使ったお店のレシートなど
を提示してもらい、裏付けが取れるようにする。
・学生と連絡するときは、会社用のアカウントのみで連絡するようにし、個人用のアカウントでは連絡を取らないようにする。
・学生に対する企業説明用資料に社員との間のトラブルが発生した場合の連絡先を載せ、説
明会などでも周知する。
面接の場面
・面接の際には、学生の身体的特徴や人間関係(友人関係、恋愛関係)について尋ねないよう
ガイドラインを作成する。
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