「コロナに効く」と漢方薬販売で逮捕、訪問販売規制について
2020/04/17 コンプライアンス, 特定商取引法
はじめに
「新型コロナウイルスにも効く」とうたい漢方薬を訪問販売していたとして男2人が大阪府警に逮捕されていたことがわかりました。不十分な書面を渡していた疑いが持たれております。今回は特定商取引法の訪問販売規制について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、大阪府松原市の医薬品販売会社「まなべ妙薬堂」の社長ら男2人は15日、訪れた80代女性宅で漢方薬を14万7千円で販売したとのことです。その際クーリングオフなどの必要事項が記載されていない振込用紙を交付していた疑いが持たれております。同女性の親族が大阪府警に被害を相談し発覚したとされます。容疑者の2人は新型コロナウイルスによる外出自粛で客が集まらず訪問販売に力を入れ始めたとしています。
特定商取引法による規制
特定商取引法では事業者が訪問販売を行う際に一定の事項の義務や禁止事項が定められております。訪問販売とは販売業者が営業所等以外の場所で契約を行う販売をいいます。典型的には消費者宅に訪問して行う販売ですが、路上や喫茶店、ホテルや公民館を借りて行う展示販売等も該当するとされております。違反した場合には業務改善指示(7条)、業務停止命令(8条)、業務禁止命令(8条の2)の他、6ヶ月以下の懲役、100万円以下の罰金などの罰則がさだめられております(71条等)。
事業者の義務
(1)事業者の明示等
訪問販売を行う際には、勧誘に先立って①事業者の氏名(名称)、②勧誘の目的、③販売しようとする賞品の種類を告げる必要があります(3条)。そして勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があるかを確認する必要があります。この時勧誘を断られた場合、その後改めて勧誘することが禁止されます(3条の2)。
(2)書面交付
事業者は契約の申し込みを受けたときや契約締結に際して以下の事項を記載した書面を交付する必要があります(4条、5条)。
①商品(権利、役務)の種類
②販売価格
③代金の支払時期、方法
④商品の引き渡し時期
⑤クーリングオフに関する事項
⑥事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人代表者の氏名
⑦契約締結を担当した者の氏名
⑧契約締結日
⑨商品名、商品の商標または製造業者名
⑩商品の型式、数量
⑪隠れた瑕疵があった場合の定めがある場合はその内容
⑫契約解除に関する定めがある場合はその内容
⑬その他特約がある場合はその内容
禁止行為
販売業者が訪問販売を行うに際して、以下の不当行為が禁止されております(6条)。
①勧誘を行う際、または契約解除を妨げるために事実と違うことを告げること
②勧誘を行う際、故意に事実を告げないこと
③契約を締結させ、または契約解除を妨げるために相手を威迫して困惑させること
④目的を告げない誘引方法により誘引した消費者に対して公衆の出入りする場所以外で勧誘を行うこと
コメント
本件で逮捕された「まなべ妙薬堂」の社長らは訪問販売に際してクーリングオフなどの必要事項が記載されていない振込用紙を交付したとされております。これは特定商取引法の書面交付義務に違反するものと言えます。上記のように書面交付義務違反についても罰則の対象となっております。同容疑者はマスクが足りていないのではないかと電話を掛け、欲しいと答えた家に訪問していたとされます。昨今のコロナウイルスによる影響で販売が激減し、各家庭への電話販売や訪問販売に移行している業者は増加していると推測されます。しかし店舗での販売と異なりこれらの販売方法には特定商取引法などで特別の規制が定められております。訪問販売の際には必要事項を明示しているか、必要な書面を交付しているかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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