リニア談合で約43億円、独禁法の課徴金について
2020/10/26 独禁法対応, 独占禁止法, 建設
はじめに
リニア中央新幹線の新駅開設工事をめぐる談合事件で公正取引委員会は21日、大林組と清水建設に計約43億円の課徴金納付命令を出す方針を固めたことがわかりました。大成建設や鹿島建設にも排除措置命令が出されるとのことです。今回は独禁法が規定する課徴金制度について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、JR東海が発注するリニア中央新幹線の品川、名古屋の新駅開設工事に関し平成26年から27年にかけて大林組、大成建設、鹿島建設などゼネコン大手4社が談合し、事前に受注予定業者を決めていたとして独禁法違反行為が行われていたとされております。この件につき大林組と清水建設は公取委への自主申告を行っており、両社の担当者は不起訴となりましたが、東京地検特捜部は4社を起訴し大林組には罰金2億円、清水建設には罰金1億8千万円の有罪判決が既に言い渡されております。
独禁法の課徴金制度とは
一定の独禁法違反行為に対して、公取委から国庫に納付するように命じられる金銭的不利益を課徴金と言うとされております。課徴金の対象となる行為はカルテル、談合などの不当な取引制限(7条の2第1項)、支配型私的独占(同2項)、排除型私的独占(同4項)、共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用となっております(20条の2~6)。課徴金は基本的に対象となる行為に関する売上額に一定の算定率を乗じて額が決定することとなります。算定率は行為により、また事業者の業種や規模によってことなります。例えば不当な取引制限の場合は製造業で10%(中小企業は4%)、小売業で3%(中小企業は1.2%)、卸売業で2%(中小企業で1%)となります。支配型私的独占も同率ですが大企業と中小企業の区別はありません。優越的地位の濫用は1%で統一されており、それ以外の不公正な取引方法では順に3%、2%、1%となっております。
課徴金減免制度
課徴金の対象となる違反行為を行っても、自主的に公取委に申告した場合には課徴金額が減免されることがあります。これを課徴金減免制度(リーニエンシー制度)と言います。現行の減免制度では公取委の調査開始前に1番最初に申請した事業者は100%、2番目に申請した事業者は50%の減免を受けることができ、調査開始後に申請した場合は30%となっております。なおこの制度には改正が入っており、令和2年12月25日以降は新制度が適用されることとなっております。新制度では調査開始前の1位が100%というのは変わりませんが、2位は20%、3位から5位が10%、6位以下は5%と減免率が減少しております。その代わり捜査に協力した度合いに応じて最大40%が加算されることとなります。調査開始後は最大20%の加算となります。
課徴金適用事例の推移
公取委の発表によりますと、課徴金納付命令が出された件数は平成26年度が128件でしたが、翌平成27年には31件、28年は32年、29年も32件、そして30年度では18件と減少傾向にあります。課徴金の総額も26年は約171億円であったところ、30年には2億6千万円と大幅に減少しております。しかし一方で課徴金減免制度による申告数は逆に増加しており、26年には61件であったところ、翌年からは100件程度で推移しております。適用件数も26年では10件でしたが、翌年からは20~30件前後で推移しております。課徴金減免制度の認知度も近年高まってきたのではないかと考えられます。
コメント
本件で大林組、清水建設、鹿島建設、大成建設の4社はリニア新駅の建設工事受注に関して談合を行ったとされます。そしてそれにより実際に受注したのは大林組、清水建設とされます。両社には排除措置命令および課徴金納付命令、それ以外の2社には排除措置命令のみが出されるとされます。大林組と清水建設は申告時期は不明ですが、課徴金減免制度により減免を受け、大林組が約31億円、清水建設が約12億円となる見通しとのことです。以上のように独禁法違反の際には課徴金納付命令が課されることがあります。課徴金は罰金とは異なり、違法な手段によって得た利益の剥奪といった意味合いがあることから売上額に一定の算定率を乗じて決定されます。そのため非常に高額になることがあり、過去には約400億円というものが存在します。実際に課徴金によって破綻した企業も存在すると言われております。独禁法違反の疑いが生じた場合には迅速に公取委に問い合わせを行うなど対応していくことが重要と言えるでしょう。
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