日本振興銀行の問題点(1)~所有と経営の分離が不十分~
2010/07/23 商事法務, コンプライアンス, 会社法, 金融・証券・保険
日本振興銀行の木村剛前会長の指示によるメール削除指示が、銀行法違反(検査忌避)にあたるとして、同会長が逮捕された事件。木村前会長らは昨年6月~今年3月に行われた金融庁の立ち入り検査の際、破綻した商工ローン大手のSFCGとの債権取引や、融資先が加盟する中小企業振興ネットワークの会員企業との取引に関するメールなど約700通を保管先のサーバーから意図的に削除し、検査を妨害した疑いが持たれている。
そのSFCGとの債権取引は、信託銀行との二重譲渡の疑いがもたれていた。そのため、債権取引にかかる執行役会において、コンプライアンスの観点から、実行に反対する執行役もいた。
その際、木村前会長は、株主代表訴訟を提起して解任をチラつかせながら(※)、執行役1人1人に意思を確認し、反対派執行役の声を封じていったという。結果として、反対派執行役4人が会社を去ることになった。
執行役会が開催された時期、木村前会長は日本振興銀行の株式20%を保有していた。委員会設置会社の制度趣旨として、執行役に業務執行を委ねることで、経営の合理化・適正化を図る点がある。
株式会社・委員会設置会社においては、会社の実質的所有者である株主と、経営陣である役員とを分離することで、より合理的・適正な経営を実践することを目的としている。
今回の日本振興銀行の事件では、代表執行役が大株主であったことで、所有と経営の分離が不十分であり、経営者としての立場で行動すべき木村前会長が、大株主としての立場を濫用し、意見を通したことにより、結果としてかえって経営の適正化が阻害されてしまったいえよう。
※ 株主代表訴訟(解任の訴え、会社法854条)
役員の職務の執行に関し不正の行為、当該役員を解任する旨の議決が株主総会において否決されたとき、総株主の議決権の3%以上の議決権を6ヶ月以上保有する株主は、当該役員の解任を請求する事ができる。なお、株主総会において、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数(定款の定めがある場合にはそれによる)によって、役員を解任する事ができる。(会社法329条1項、339条1項)
関連コンテンツ
新着情報
- ニュース
- 外国人雇用の理由「労働力不足の解消や緩和」が60%超 -厚労省2025.1.7
- NEW
- 厚生労働省が日本で働く外国人についての調査を初めて実施し、その結果を公表しました。 その中で...
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- まとめ
- 独占禁止法で禁止される「不当な取引制限」 まとめ2024.5.8
- 企業同士が連絡を取り合い、本来それぞれの企業が決めるべき商品の価格や生産量を共同で取り決める行...
- 業務効率化
- Araxis Merge 資料請求ページ
- 解説動画
- 斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
- 斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- セミナー
- 豊泉 健二 氏(古河電気工業株式会社 法務部 部長)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【12/16まで配信中】CORE 8 による法務部門の革新:古河電気工業に学ぶ 人材育成とナレッジマネジメント
- 終了
- 2024/12/16
- 23:59~23:59
- 解説動画
- 浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 片山 優弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階