東京地裁「ネタバレサイト」無断掲載は違法と判断、著作権侵害について
2021/04/15 知財・ライセンス, 著作権法, エンターテイメント
はじめに
いわゆる「ネタバレサイト」に連載中の漫画のセリフが無断掲載されたことは著作権侵害に当たるとして作者が発信者情報の開示を求めていた訴訟で3月26日、東京地裁は開示を命じる判決を出していたことがわかりました。無断掲載は複製権と公衆送信権侵害となるとのことです。今回は著作権侵害について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、小学館のマンガアプリで連載されている漫画「ケンガンオメガ」のほぼすべてのセリフが2019年1月から2020年5月にかけてネタバレサイトに無断で掲載されていたとされます。そこには合わせて63話分の絵やセリフが掲載されており、同漫画の作者と小学館は著作権侵害に当たるとして、サーバー管理会社に発信者の情報開示を求め東京地裁に提訴しておりました。投稿者は漫画の発売日にほぼすべての内容をそのまま掲載して多大な広告収入を得ていたと見られております。
著作権とその侵害
著作権については以前にも取り上げましたが、ここでも簡単に触れていきます。著作権は登録が必要な特許権などとことなり、著作者が著作物を創作した時点で発生します(著作権法17条2項、51条1項)。著作物は、思想または感情を創作物に表現したもので、芸術、学術、美術、音楽の範囲に属するものとされております(2条1項1号)。著作権は様々な権利の束と言われており、著作者はそれらの権利を専有しております。著作権侵害とはこれらの権利に属する行為を第三者が行うことによって発生します。著作権侵害に対しては差止請求や損害賠償請求ができ(112条1項、民法709条)、また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(119条)。以下著作権侵害行為を具体的に見ていきます。
著作権侵害行為
著作権は、複製権、演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、翻訳・編曲等による2次著作物作成権など様々な権利が認められております(21条~28条)。これらの行為を著作権者以外の者が行うと著作権侵害となります。ただし例外的に、私的複製(30条1項)、引用(32条1項)、非営利無報酬演奏(38条1項)などは著作物の利用促進等のため認められております。「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させない」範囲での、いわゆるパロディも許容されていると言えます(最判昭和55年3月28日)。また著作権には期間制限があり、著作者の死後70年が経過したら消滅するとされております(51条2項)。この期間が経過した後は侵害行為に当たる行為を行ったとしても著作権侵害にはなりません。
発信者情報開示制度とは
本件で原告側が行った発信者情報開示請求とは、プロバイダ責任制限法4条に基づいてサーバーの管理者やプロバイダなどに投稿者の情報提供を求めることができる制度です。一般的には誹謗中傷などの名誉毀損的書き込みに対して利用されることが多いですが、著作権侵害行為などに対しても利用できます。発信者情報開示請求を行うための要件はおおまかに、権利侵害の明白性と正当理由の存在とされております。発信者側にも表現の自由やプライバシー権が存在することから、発信者に違法性を阻却する事由が無いことも請求者側が立証する必要があると言われております。削除要請や損害賠償請求、刑事告発など法的権利の実現のためであれば基本的に正当理由も認められることとなります。
コメント
本件ではマンガアプリで現在連載中の漫画がいわゆる「ネタバレサイト」に無断で掲載されていたとされます。一部の絵とともにセリフがほぼそのまま掲載されており、東京地裁は「複製権」と「公衆送信権」を侵害しているとして発信者情報の開示を命じる判決を出しました。著作者が作品を無断で複製されない権利である複製権と、無断で講習に発信されない公衆送信権を侵害しているということです。以上のように著作権には様々な権利が包含されており、著作権者以外の者がこれらの行為を行うと原則として著作権侵害となります。昨今漫画やアニメ、映画などの著作物がインターネット上に無断で掲載やアップロードされており日本の知的財産にとって膨大な損害が出ていると言われております。自社のコンテンツ侵害に対してどのような対応ができるのかを予め検討しておくことが重要と言えるでしょう。
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