男性版産休成立、育児休業制度について
2021/06/07 労務法務, 法改正対応, 法改正, その他
はじめに
男性の育児休業取得を促す改正育児・介護休業法が3日、衆議院本会議で可決・成立しました。
出産時から8週間以内に男性も休暇が取得できる男性版産休が盛り込まれます。
今回は育児・介護休業法の育休制度について見直していきます。
事案の概要
現在政府は2025年までに男性の育児休業の取得率を30%にすることを目標に掲げております。しかし厚生労働省によりますと、2019年度は取得率が7.48%に過ぎず、その期間も8割が1ヶ月未満にとどまっているとされます。
男性の育児時間が長いほど、第2子以降の出生割合が高くなる傾向にあると言われ、男性が積極的に育児に参加するために育児休業を取得しやすい環境を整備するため、女性の負担が特に大きい出産の直後の8週間以内に、あわせて4週間の休みを取得できる制度を盛り込んだとのことです。
現行育児休業制度
現行の育休制度の対象労働者は1年以上継続雇用されている労働者で、子が1歳半までに労働契約期間が満了・不更新となることが明らかでない者となります。
育休の期間は原則として子が1歳に達するまでの間で申し出た期間となります。回数は子1人につき原則1回となりますが、男性の場合は子の出生日から8週間以内に最初の育休を取得した場合は2回目の取得が可能となります。
また配偶者が同時または先に育休を開始している場合は子が1歳2ヶ月に達するまでの間に1年間取得できます(パパ・ママ育休プラス)。
子が1歳に達する日にいずれかの親が育休中であり、保育所等への入所を希望しているができていない場合、または配偶者が死亡、負傷、疾病等により子を養育することが困難な場合は子が1歳6ヶ月に達するまで休業期間の延長も可能です。
育児休業の手続き
育児休業を希望する労働者は、休業開始日の1ヶ月前までに書面で事業者に申し出ることとなります。これにより労働者は希望通りの日から休業することができます。
申し出がこれよりも遅れた場合は事業者は申し出日の翌日から1ヶ月以内の範囲で休業開始日を指定できます。
子が出産予定日よりも前に出生した場合は休業開始1週間前までに申し出ることによって希望する日から休業ができます。休業終了日は子が1歳に達するまで1ヶ月前までに申し出ることによって1回に限り繰り下げることが可能となっております。
改正育児・介護休業法のポイント
これまで男性は子の出生後8週間までに1回、その後は原則として1歳に達するまで1回とまとまった育児休業しか取得できませんでした。
今回の改正で出生から8週間までの間に4週間の育休を2回に分けて取得することも可能となり、さらに8週以後1歳までの育休も2回に分けることが可能となります。
これにより1歳までに4回に分けて取得することができます。出生後8週間までは育休取得日数の半分を上限に仕事をすることも可能です。育休取得対象の男性に対しては会社側から制度説明や取得の意向を確認することが義務付けられます。これを怠った場合は社名の公表がなされることとなり、従業員が1000人を超える会社は男性の育休取得率の公表も義務付けられます。
コメント
厚労省の調査によりますと、女性の産休後の育休取得率は平成19年以降80%以上で推移しており高い取得率を維持しております。一方男性は、ほぼ0に近かった平成8年以降徐々に増加してはいるものの令和元年時点で7.48%と低い水準となっております。
男性が育休を取得しなかった主な理由は会社に制度が整備されていないこと、収入を減らしたくなかったこと、職場が育休を取得しづらい雰囲気だったことが挙げられております。また近年育休を取得したことを理由とする、いわゆるパタハラによる訴訟も増加しております。政府の育休取得と出生率向上の目標とは裏腹に企業内の育休取得への取り組みは進んでいないのが現状と言えます。
今回の法改正で会社側からの意向確認や取得率公表などが義務付けられます。今のうちから体制の整備や周知教育を進めていくことが重要と言えるでしょう。
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