最低賃金3%上げ 全国平均930円
2021/07/16 労務法務, 労働法全般, その他
はじめに
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の最低賃金を全国平均で時給930円とすると決めました。
現在の全国平均は902円であり、28円の引き上げは2002年度から時給で示す方式になって以降過去最大、最低賃金の上げ幅は約3%にものぼります。
事案の概要
菅首相自身が、官房長官時代から年3%程度の大幅な、最低賃金の引き上げを主張してきたこともあり、政府は、コロナによる打撃をうけた経済を回復するためには、最低賃金の引き上げが必要と考えています。
国民の所得向上により消費回復が生じ、経済を成長させるという考え方です。これに対し、中小企業の団体をはじめとする経済界は現状維持を訴えましたが、政府の意向に沿った結果となりました。
最低賃金について
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。派遣労働者には、派遣先事業場の地域の最低賃金が適用されます。
使用者は最低賃金の適用を受ける労働者の範囲及びこれらの労働者に係る最低賃金額、算入しない賃金並びに効力発生年月日を常時作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。地域別の最低賃金額以上の賃金額を支払わなかった場合、使用者は50万円以下の罰金(最低賃金法40条)に処せられることがあります。
企業への影響
当然ですが、従業員の最低賃金が上がると、企業の負担がその分増えます。最低賃金ぎりぎりで非正規労働者を雇用している企業は人件費が増え、資金繰りに多大な影響を及ぼす可能性があります。非正規労働者を多く雇っている企業にとっては大きな痛手となり得ます。
また、最低賃金が引き上げられることにより、その恩恵を受けられない正社員のモチベーションが低下する可能性があります。非正規労働者との給与差が縮まるだけにとどまらず、非正規労働者の給与の増加分を正社員の給与の引き下げにより補う等の対応がありえ、正社員のモチベーションの低下及び生産性の低下が生じえます。企業としては正社員へのケアに注力する必要があるでしょう。
コメント
最低賃金の引き上げは、コロナ禍で体力の弱った企業にとって非常に厳しい政策だといえます。このような企業淘汰をする是非はさておき、特に多数の非正規労働者を雇用している体力の弱った企業としては、最低賃金の引き上げは新たな試練となるでしょう。
非正規労働者を雇う企業の企業法務従事者としては、設備投資の抑制や残業時間の削減、退職一時金を年金化する等、資金繰りをうまくやる必要があるでしょう。また、最低賃金の引き上げに向けて、厚生労働省では中小企業・小規模事業者に対する助成金支援が行われているため、これらの制度を利用することも一つの手となるでしょう。
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