自賠責保険について知ろう!
2021/10/15 コンプライアンス, 危機管理, 民法・商法, その他
はじめに
国土交通省が自賠責保険について、加入の流れから加入しない場合のリスク等をHPにて紹介されているということで、今回は自賠責保険と会社の関係について説明していきます。
事案の概要
原動機付自転車を含むすべての自動車は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険(共済)に入っていなければ運転することはできません。無保険運転は違法ですが、実態としては無保険運転を許容する会社が実在しています。保険はそもそも賠償責任を負う場合に初めてその金額を補填するものですので、今回はどのような場合に会社が交通事故の賠償責任を負うのかを説明していきます。
事故時の会社側の責任
社員が自動車を運転し交通事故を起こした場合に会社が負う責任としては、使用者責任(民法715条1項前段)と運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)が挙げられます。前者は、社員が「事業の執行について」交通事故により損害を与えてしまったこと、つまり自動車の運転が事業を執行する過程であったと認定されるかどうかがポイントとなります。後者は、交通事故により他人の生命または身体を害したときに「自己のために自動車を運転の用に供する者(運転供用者)」に対して損害賠償責任を負わせるものであり、自動車の運行により会社が利益を得ているか、自動車の運行について直接・又は間接に指揮・監督しうる地位にあるかがポイントとなります。なお、人損の場合には上記の両責任が問題となりますが、物損の場合には使用者責任のみが問題となります。
会社の責任が認められる場合
まず、社員が社用車を利用していた場合、業務時間内の事故であれば会社に法的責任が認められます。次に、社員が社用車を利用していたが業務時間外の事故である場合には、その社員が無断で私用に利用していた場合等を除き、会社は利益を受けているといえるので運行供用者責任は認められます。一方、使用者責任はあくまで業務執行中の不法行為をしたことが要件となるため、会社が同責任を負うことはありません。それでは、社員がマイカーを利用し事故を起こした場合はどうでしょうか。まず、会社がマイカーの利用を明確に禁止していた場合には、無断でマイカーを利用した社員の交通事故の責任を会社が負うことはありません。もっとも、会社がマイカー利用を黙認していた場合は別です。次に、マイカー通勤を会社が許可していた場合、通勤時の事故について会社の責任は認められにくい傾向にあります。もっとも、外回りの営業や運搬のためのマイカー利用を会社が指示・黙認していた場合には、会社の責任が認められる可能性があります。
コメント
企業法務従事者は、法律関係を明白にすることによって交通事故時の会社の立場を正確に把握すべきですし、社員が保険に入っているかのチェックも怠るべきではないでしょう。
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