震災を理由に取引業者への代金支払いを拒む東電。取引業者は連鎖倒産のおそれ。
2011/04/30 契約法務, 事業再生・倒産, 民法・商法, その他
東電、取引業者への代金支払いを保留。契約解除も視野に。
今年3月31日、東電が福島第一原発に出入りする取引業者に対し、一方的に契約解除や支払保留の通知を行っていたことがわかった。
地震発生前に契約を交わした「工事業者」、「業務委託業者」、「資材納入業者」が、その主な対象となったようだ。なんでも、工事完了時に必要な検査や、物品納入時に必要な検収(確認作業)が、地震で困難になったことが、その理由らしい。こんなところにも、原発事故の被害の影響が出ているのだ。
雑感
東電と、その取引業者が、契約解除や支払保留につき、どのような事前の取り決めをしていたのか把握できないため、ハッキリとしたことは言えないが、これらの点につき、東電側にかなり有利な取り決めがなされていた可能性は高いだろう。資本金6,764億円の大企業と取引を行う小規模事業者の立場は甚だ弱いということか。
一方で、下請代金支払遅延等防止法(通称、下請法)の適用による救済をとの声もあるが、東電と、今回の通知を受けた各事業者が、同法でいう「親事業者」と「下請事業者」という関係にあると言えるのかは疑問である(下請法にいう「親事業者」の定義はかなり複雑なため、今回は割愛する)。
このように、結論として、東電側として、特に契約違反や法律違反はない可能性が高い。しかし、小規模な事業者からすると、東電からの支払いの有無で、キャッシュが回るか否かが左右されるのであり、倒産の危機を迎える事業者も少なくないと考えられる。
また、震災後に東電と復旧工事等に関する契約を交わした事業者も、支払いの保証のないまま、危険な作業に従事せざるを得なくなるのであり、復旧工事の停滞のおそれもある。
工事完了後の検査や、物品納入時の検収が出来ないまま代金を支払う東電側のリスクと、上記の各種リスクを天秤にかけたときに、後者の方がはるかに大きいのではないだろうか。原発事故による被害の連鎖を止めるためにも、今回の原発事故に一定の責任が認められる東電は、この程度のリスクは自ら背負うべきだと私は考える。皆さんは、どのようにお考えだろうか。
関連コンテンツ
新着情報
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階
- 解説動画
- 江嵜 宗利弁護士
- 【無料】今更聞けない!? 改正電気通信事業法とウェブサービス
- 終了
- 視聴時間53分
- ニュース
- 青森市内の2社を書類送検、労災隠しとは2025.1.9
- NEW
- 青森労働基準監督署は7日、従業員が労災で休業したにもかかわらず報告していなかったとして、青森...
- セミナー
- 豊泉 健二 氏(古河電気工業株式会社 法務部 部長)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【12/16まで配信中】CORE 8 による法務部門の革新:古河電気工業に学ぶ 人材育成とナレッジマネジメント
- 終了
- 2024/12/16
- 23:59~23:59
- 解説動画
- 斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
- 斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード
- NEW
- まとめ
- 株主総会の手続き まとめ2024.4.18
- どの企業でも毎年事業年度終了後の一定期間内に定時株主総会を招集することが求められております。...
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード