ユニバーサルエンターテインメント創業者に50億円申告漏れの指摘、タックスヘイブン税制の個人適用
2024/08/08 税務法務, 海外進出, コンプライアンス, 会社設立, 租税法
はじめに
大手パチスロ機メーカー「株式会社ユニバーサルエンターテインメント」の創業者で元会長の男性が、東京国税局から約50億円の所得税の申告漏れを指摘されていたことがわかりました。
外国法人を使った租税回避を防ぐ「タックスヘイブン対策税制」。この税制が法人ではなく個人に適用された珍しい事例となりました。
会社の元会長個人に税制適用
報道などによりますと元会長(81)は2010年、香港に資産管理会社を設立。その背景には、現地の法人税率の低さがあったとみられています。元会長は親族らと株を持ち合うなどして一時は約1000億円相当の個人資産を管理していたということです。こうした資産に加え、利息などでも多額の収入があったとみられています。
また、香港の資産管理会社は、ユニバーサルエンターテインメント社の株を取得して親会社となっており、配当でも利益を得ていたということです。
東京国税局は、今回、香港の資産管理会社に事業実態がないと判断。租税回避を防ぐためのタックスヘイブン対策税制を元会長に適用したということです。
国税局は、香港の資産管理会社の所得のうち元会長の株式保有割合約46%分に相当する約30億円については元会長の所得として日本で税務申告すべきだったと指摘。同資産会社から元会長個人への配当分も合わせ、申告漏れ総額は約50億円とみられています。
元会長は処分を不服として国税不服審判所に審査請求をしましたが、2023年末に棄却されたということです。
タックスヘイブン対策税制について
タックスヘイブン対策税制について、国税庁は、
「租税の負担が著しく低い外国法人で我が国の法人又は居住者により株式等の保有を通じて支配されているとみなされるものの留保所得を我が国株主の持分に応じてその所得に加算して課税するというもの」
とまとめています。
2022年には、株式会社サンリオが同税制の適用により追徴課税処分を受けています。
【2022年のサンリオ追徴課税処分事案】
サンリオは、「2021年3月期までの過去5年間、香港と台湾にあるサンリオ子会社の所得約42億円を親会社と合算して申告すべきだった」と東京国税局に判断され、約13億円の追徴課税処分を受けたといいます。
しかし、サンリオ側は「香港・台湾の子会社の事業は、現地でしか行えない事業で、適用除外基準に該当する」として、租税回避目的ではないと反論。2022年10月28日、サンリオは東京国税不服審判所に対し審査請求を行いましたが、翌年10月3日に審査請求が棄却されます。
サンリオはこの棄却裁決を不服として、同年12月15日、東京地方裁判所に更正処分等の取消請求訴訟を提起しています。
サンリオに追徴課税13億円、外国子会社合算税制とは(企業法務ナビ)
なお、サンリオは2017年にも同様の理由で約11億円の追徴課税処分を受けており、処分の取り消しを求めて争いましたが、2022年8月8日、最高裁判所は上告棄却及び上告不受理の決定を行っています。
タックスヘイブン対策税制に基づく更正処分に対する取消訴訟の提起について(株式会社サンリオ)
コメント
ユニバーサルエンターテイメントの事案では、ここまで、会社自体にペナルティはないようですが、元会長が引き起こした事件ということで、会社の社会的な信頼や評判の低下につながるおそれがあります。
さらに、タックスヘイブン対策税制の適用を受けた場合、それが個人・会社いずれの場合でも、会社は対外的な説明や係争準備・再発防止・各種手続きなどの対応に追われることになります。
タックスヘイブンの対象国や地域などに会社を設立する場合には、後日のタックスヘイブン対策税制の適用を念頭に置きつつ、入念な情報収集と精査・準備を行うことが重要でしょう。
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