公取委が日本プロ野球組織に警告、独禁法の事業者団体規制について
2024/09/25   コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, エンターテイメント

はじめに

 公正取引委員会が19日、独禁法違反のおそれがあるとして、日本野球機構(NPB)の内部組織である「日本プロフェッショナル野球組織」に対し警告を行っていたことがわかりました。不当な活動制限に当たる可能性があるとのことです。今回は独禁法が規制する事業者団体規制について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、日本プロ野球組織は、プロ野球選手が契約交渉を行うに際の代理人について、弁護士法の規定による弁護士であることと、各球団に所属する選手が既に選任している弁護士を他の選手は選任できないとする方針を定めていたとされます。この方針については日本プロ野球選手会が見直しを求めてきており、公正取引委員会は独禁法で禁止されている事業者団体による不当な活動制限に当たるとして警告を行いました。日本プロ野球組織はこれらの方針について見直しを行うとしております。

 

事業者団体規制

 独禁法では事業者の自由かつ公正な競争を阻害するような行為として、不当な取引制限や私的独占、不公正な取引行為などを禁止しております。そして複数の事業者の結合体である事業者団体についても一定の規制を置いております。ここで「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2以上の事業者の結合体または連合体を言うとされます(独禁法2条2項)。具体的には2以上の事業者が社員である社団法人その他の社団、2以上の事業者が理事または管理人の任免、業務の執行またはその存立を支配している財団法人その他の財団、2以上の事業者を組合員とする組合または契約による2以上の事業者の結合体とされます。○○工業会や○○協会、○○協議会、○○組合、○○連合会といったものが事業者団体に当たると言えます。

 

禁止行為

 上のような事業者団体については、(1)一定の取引分野における競争を実質的に制限すること、(2)不当な取引制限または不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定または国際的契約、(3)一定の事業分野における現在または将来の事業者の数を制限すること、(4)構成事業者の機能または活動を不当に制限すること、(5)事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすることが禁止されております(8条各号)。事業者団体が構成事業者が供給する商品または役務の価格や数量の制限を行う場合に(1)の行為に該当する可能性があります。事業者団体が新たに参入しようとする事業者の参入を阻止したり、既存の事業者を排除するといった場合に(3)に該当することとなります。そして事業者団体が構成事業者の事業活動に関して制限を加え、それにより公正競争を阻害する場合に(4)に該当することとなります。

 

違反した場合

 これらの禁止行為に違反した場合、公取委から当該行為の差止や事業者団体の解散その他必要な措置を命じる排除措置命令が出されることがあります(8条の2第1項)。違反行為が既に解消されていたとしても、特に必要と認める場合はこの排除措置命令が出されることもまります(同2項)。また違反行為のうち、上記(1)と(2)の行為を行った場合は課徴金納付命令が出されることとなります(8条の3)。なおこの課徴金は行為が終了した日から7年が経過すると出すことができなくなります。そして上記(1)~(4)の行為にはそれぞれ罰則が規定されており、(1)については5年以下の懲役または500万円以下の罰金、(2)~(4)については2年以下の懲役または300万円以下の罰金となっております(95条1項1号~4号、2項1号~4号)。

 

コメント

 本件で日本プロ野球組織は構成団体の選手が交渉する際に選任する弁護士は他の選手が選任していない者でなければならないとして、代理人の使用を制限していたルールが問題視されております。このような行為は8条4号に規定される構成事業者の機能または活動を不当に制限することに当たるとして公取委は同組織に警告を出しました。同組織については以前も新人選手がドラフト会議前に外国球団に入団したりした場合に、その契約が終了後も3年間は指名しないとの申し合わせをしていた件で問題視されていた経緯があります。以上のように各業界の事業者団体については、個々の事業者規制とは別に独禁法上の規制に服すこととなります。それぞれの団体で構成事業者に不当な制限を加えていないか、また競争を阻害する指示を出していないか、見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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