NTTが社名変更へ、NTT法とは
2025/01/08   商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに

 NTTは正式社名の「日本電信電話」を変更する方針を固めていたことがわかりました。新社名は春までに固め、6月の定時株主総会で決議する方針とのことです。今回はNTTや日本の通信基盤を規制する通称NTT法と商号変更について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、NTTは昨年4月のNTT法の改正を受け、同社の正式名称である「日本電信電話」を変更する方針を打ち出しました。同法の改正に際し同社は、「電信」も「電話」も事業の主体とマッチしていないため、自社で社名を変更・決定できるようにしてもらいたい旨要望を出しており、それが受け入れられた形となったとされます。同社社長は社名変更について、昨年5月の決算会見で、「ブランドとしてどうしていくかという大きな課題。変えるとすれば株主総会に付議しないといけないため、2025年ぐらいをめどにしっかり考えていきたい」話しており、春までには固まる見通しです。前身の電電公社の民営化から40年となる節目の年の今年、社名変更でブランド力を高めたいとのことです。

 

NTT法とは

 NTT法とは、正式名称を「日本電信電話株式会社等に関する法律」といい、旧「電電公社」が1985年に民営化する際に制定されました。当時は「日本電信電話株式会社法」という名称でしたが、1999年改正によって現在の名称に改められました。この法律は電電公社の民営化と、日本全国に張り巡らされた通信インフラの適正かつ公正な運営と、国民への安定した提供を目的としております。具体的には「東日本電信電話株式会社」と「西日本電信電話株式会社」およびその親会社である「日本電信電話株式会社」の事業内容、責務、株式の保有、役員資格の制限、総務大臣による監督、役員等に対する罰則などが規定されております。NTTは民営化してはいても、日本の通信インフラを一手に担い、経済や国民生活、安全保障など日本社会に極めて重要な立ち位置にあることから、特別にこのような法律が用意されております。

 

NTT法の改正

 NTT法はこれまで幾度かの改正を経てきましたが、昨年4月に大きな法改正がありました。これは政府が進める防衛費の財源確保の一環で、政府保有のNTT株の売却などが検討されたことが契機となっていたと言われております。また改正前NTT法では、NTTが研究・開発した技術は日本の電気通信の向上発展に寄与し、公共の福祉の増進に資するために成果を普及させなければならないとされておりました(旧3条)。これは技術が海外に流出することや国防上の問題の発生も懸念されることとなります。またNTTからは社名も現在の事業内容にそぐわないことから変更が可能となるよう要望が出されました。そこで改正法では、(1)研究の推進責務や研究成果の普及責務が廃止され、研究開発の自律性が確保され、(2)外国人役員を一切認めない規制から、代表取締役の就任や役員の3分の1以上を占めることを禁止するまでに緩和され、(3)役員選任と剰余金処分の認可制を廃止し、役員選任は事後届出となり、(4)会社名(商号)変更が可能となりました。

 

通常の商号変更手続き

 昨年のNTT法改正までNTTでは商号変更ができませんでしたが、上記のとおり現行法では商号変更が可能となりました。ここで通常の商号変更の手続きを見直しておきます。まず商号は定款記載事項(会社法27条2号)ですので商号を変更するには定款変更が必要となります。そして定款変更には株主総会の特別決議による承認が必要です(466条)。特別決議とは、原則として株主総会で議決権を行使することができる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成による決議を言います。そして株主総会の日の翌日から2週間以内に法務局で登記をすることとなります。その際に必要となる書類は、変更登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、代表取締役の印鑑証明書、新商号の印鑑届出書となります。登録免許税は3万円です。

 

コメント

 NTTはかねてから開発を進める次世代通信基盤「IOWN」の国際展開の推進を考えており、民営化40年となる今年に社名も変更してブランド力を高めたいとしております。新たな社名はまだ決まっておりませんが、5月には公表する見通しとのことです。NTT法改正によりNTTも通常の会社法の手続に従って商号変更が可能となりました。6月の定時総会での特別決議で承認が得られれば新社名に変わることとなります。また一部外国人の役員を選任することも可能となり、よりグローバルな企業へと変革することも可能となってきます。以上のように会社は法で特別の規制が無い場合は会社法の手続によって商号変更が可能です。時代の流れや事業内容に即した商号に変えることも必要となってくる場合があると言えます。商号変更の手続や、制約などについて今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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