ようやく・・胆管がんで初の労災認定
2013/03/28 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、大阪労働局は27日午前、発端となった大阪市中央区の校正印刷会社「サンヨー・シーワィピー」の元従業員ら16人(うち7人死亡)の労災請求を認定し、元従業員や遺族に支給決定通知を発送した。胆管がんの労災認定は初めて。
今月14日に開かれた厚労省の専門検討会では、元従業員ら16人に慢性疾患など他の発症因子がないことなどから、印刷機の洗浄剤に含まれる「1、2ジクロロプロパン」を「発症の原因である蓋然性が極めて高い」と指摘し、16人の労災申請を認定すべきだとする報告書をまとめていた。
16人のうち5人は既に労災申請の時効(5年)を過ぎたが。今回の印刷職場での胆管がん発症がこれまで知られていなかったことを考慮し、同省は因果関係が明らかになった「検討会の翌日」(15日)を時効の起算点に設定した。
同社以外に対しても全国で労災申請がなされており、厚労省の検討会が順次、認定の可否を検討する。
労働災害とは
労働者が業務中、負傷(怪我)、疾病(病気)、障害、死亡する災害のことを言う。広義には、業務中のみならず、通勤中の災害も含む。狭義には、負傷(や負傷に起因する障害・死亡)のみを指す用語として使われ、疾病(や疾病に起因する障害・死亡)は指さないことも多い。
労働災害に関しては労働基準法75条1項に「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」と規定されている。そこで、労働者が確実に補償を受けられるようにするため、及び事業主の補償負担の軽減のために労災保険制度が設けられ、労働者を一人でも使用する事業(個人経営の農業、水産業で労働者数5人未満の場合、個人経営の林業で労働者を常時には使用しない場合を除きます。)は、適用事業として労災保険法の適用を受けることになり、保険料を納付しなければならない。
このように労災認定を受けてもお金を払うのは国であるが、企業が労災認定に消極的となる以下のような事情がある。一つは企業のイメージダウンである。これにより労働基準監督署に調査に入られたり、人材確保が難しくなったりする。もう一つは保険料のアップである。
コメント
利益追求と良心との狭間で四苦八苦するのが企業の本質ともいえる。しかし、臭いものに蓋をしつづけると、結局取り返しのつかない甚大な被害を招くことになる。常に良心に従うわけにはいかないのが企業人であろうが、引き時を間違えないことが肝要である。
参照条文
【労働基準法】
75条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
【労働基準法施行規則】
35条 法第七十五条第二項 の規定による業務上の疾病は、別表第一の二に掲げる疾病とする。
【労働基準法施行規則別表第一の二】
(e-gov)
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