ベトナムの企業登録規定改正で救われた外国企業
2013/07/03 海外法務, 海外進出, 外国法, その他
ベトナムにおける外資企業再登録規定改正の流れ
2013年6月20日、ベトナム議会は、同国の会社法に当たる、統一企業法(Enterprise Law)170条の改正を承認した。
同条項は、2005年の改正において、その施効以前に設立されていた外資企業に、再登録(登記)を求めており、同法の施効日から2年以内に再登録が必要な旨規定していた。そして、再登録をしない場合には、投資許可書に記載されている、業種、期限の範囲内での企業活動に限定されることになっていた。
しかし、その2年の期限内に再登録する会社は少なく、さらに期間を3年延長していた。政府の調査によると、2013年6月初頭時点で、3000社近くの外資企業が、再登録の手続きを行っておらず、業務を行うことができない企業が、多数生じるおそれがあった。
そこで、ベトナム政府は、170条の再登録期限を撤廃する形で、同条項を改正した。461人の議員のうち414人が賛成に回ったが、審議過程においては、再登録を行わない企業には、ペナルティーを課すべきであるとの論調も強かった。また法の遵守という観点からも安易な改正をすべきでないとの意見もあった。
しかし、本改正が行われない場合、多くの外資企業が閉鎖に追い込まれ、ベトナムからの資本の引き上げにつながり、また多くの失業者が発生するとの懸念が計画投資省(Ministry of Planning and Investment)から発せられたこともあって、趨勢は法改正の方向に傾くこととなった。
上記3000社あまりの企業のうち、大多数は、ベトナムでの事業活動の継続を予定していた企業であり、本改正によって、それらの企業が閉鎖の危機から救われることとなった。
ベトナムでは、1980年代のドイモイ(刷新)政策の推進によって、外国からの投資が活発となり、多くの外資企業がベトナム市場に参入してきた。その結果として、経済は発展し、多くの雇用も生み出すことになった。
しかしベトナムの政治体制は、共産党の一党独裁体制であり、外資企業と党との結びつきにおいて賄賂の存在も指摘されている。こうした背景から、政府は、外資企業に厳しい態度を取ることができないと考え、再登録を行っていなかったとも考えられる。今回の法改正の流れは、ベトナム社会のいびつな側面を映し出しているともいえる。
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