障害者との共生社会実現に向けて~平成25年度障害者雇用状況が公表される
2014/05/22 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
厚生労働省は今月14日、平成25年度の障害者の職業紹介状況を発表した。ハローワークを通じた障害者の就職件数は平成24年度の68,321件から大きく伸び77,883件と14.0%の伸びを見せており、4年連続で過去最高を更新した形となる。また精神障害者の就職件数が大幅に増加し、初めて身体障害者の就職件数を上回った。
ここ最近障害者雇用に関する法整備が進みつつある。今回の調査対象である平成25年度からは障害者雇用促進法(※)に定められる障害者の法定雇用率が引き上げられた。また同法は昨年改正され、平成28年4月から新たな改正法が施行される。「共生社会」実現の理念のために、障害者を職業を以て自立させることを目的としている障害者雇用の促進であるが、今回はこれらに関する法整備について確認してみたい。
(※)正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」
小規模事業主への雇用義務が更に拡大
障害者雇用促進法では以前より、全従業員に対し法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務が定められていた。従業員200人以上の法定雇用率を下回っている事業者に対しては不足人数に応じて納付金が徴収され、これを財源とした助成や報奨金を法定雇用率を上回っている事業主に支給する形で障害者雇用の促進が図られている。また法定雇用率を下回る事業主には行政指導や企業名公表も定められている。
平成25年度から民間企業の法定雇用率は1.8%から2.0%に上がり、最低1人は障害者を雇用せねばならない事業主の範囲が56人から50人となった。これが平成25年度の障害者雇用の増加に一定の影響を与えたと考えられるだろう。
障害者へのますますの配慮も義務化へ
改正障害者雇用促進法は平成28年度から施行される。本改正では日本でも本年2月から発効している「障害者の権利に関する条約」に対応すべく、雇用において障害者に対する職業能力によらない不当な差別的取り扱いの禁止や、可能な限りで採用試験を点訳・音訳したり、車椅子に合わせた机や作業台を用意するといったことを想定した合理的な配慮の義務を明記している。また、条約対応のために障害者の従業員からの苦情に対して自主的な解決を図る義務を企業に課しており、解決しなかった紛争については都道府県労働局長が必要な助言、指導又は勧告をできるようにし、新たに調停制度を作るなどの規定も盛り込まれた。
差別的取り扱いの禁止や合理的な配慮の義務の具体的な事例については、行政、労働者、企業、障害者の四者で構成される労働政策審議会の意見を聴いて定める「指針」によるものとしており、4月25日に厚生労働省の研究会は指針作りに関する報告書を発表している。他にも本改正には政府が法定雇用率を算出する際には精神障害者の数も算入することなどが盛り込まれた。
コメント
「共生社会」と言えば聞こえはいいが、実現のために各々が負担をしようという段階になると尻込みしてしまう人は多いのではなかろうか。障害者の方々が自立して生活を送り、それにより行政の負担を下げることが望ましいことには変わりないので、障害者就職支援に関しては必要な法整備と共に一律に行政が促進していくことが期待される。また今後の日本の人口減少を見越すと、障害者の方々の力を活用していくことは人材不足に悩む企業にとっては有効な選択肢の一つともなる。今後行政には既存の助成だけでなく、障害者の方々に関わる企業側の理解を向上させ、どういった人が何が出来るのかの判断にかかるコストを下げるために、積極的に障害者の方々の活用事例紹介を行うなどの対応が求められる。
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