女性の雇用関係を巡る近時の法的動向
2015/05/19 労務法務, 労働法全般, その他
近時、政府の女性の活躍推進政策とあいまって、女性の働き方が注目されている。また、法律の分野においても、重要な判例が出たり規則の改正がなされている。
マタハラに関する最高裁判決
2014年10月、最高裁がマタハラ(女性労働者が、妊娠・出産・育休などを理由に解雇や雇止めをされたり、職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたりすること)に関して、妊娠を理由とした降格は、男女雇用機会均等法9条(不利益取扱いの禁止)に照らして、違法であると判断した。
最高裁判断は、妊娠を理由にした降格は、原則として均等法が禁じる不利益な取扱いにあたるとし、「当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」、又は「事業主において降格措置の必要性があり、その業務上の必要性の内容や程度に照らして法の趣旨に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき 」に例外的に認められるに過ぎないとしている。
厚労省の解釈通達
上記、最高裁判決を受けて、厚労省は男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法の解釈通達を改正した。
新通達では、妊娠・出産、育児休業等を「契機として」なされた不利益な取扱いは、原則として法が禁止する妊娠・出産、育児休業等を「理由として」行った不利益取扱いと解されるとした。
本通達による「契機として」とは、妊娠・出産・育児休業等の事由と、不利益取扱いとの時間的近接性によって判断される。 例えば、妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断する。
ただし、事由の終了から1年を超えている場合でも、実施時期が事前に決まっている、又はある程度定期的になされる措置(人事異動、人事考課、雇止めなど)については、事由 の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断するとしている。
均等法施行規則、指針の改正
2014年7月1日より、改正均等法施行規則等が施行されている。
①間接差別禁止の対象範囲の拡大
従来、均等法は間接差別(性別以外の事由によるものであるが、実質的に見て他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもの)として、総合職の労働者を募集、採用する際に、合理的な理由がないにもかかわらず、転居を伴う転勤に応じることが出来る旨を要件とすることを禁止してきた。
改正後には、全ての職種の労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に、 合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることが、間接差別として禁止される。
②セクハラ指針の改正
セクハラが生じた際の対応として、管理監督者や産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置が具体例として追加された。
③コース別雇用管理の指針適用
コース別雇用管理(業務内容や転勤の有無によって、総合職、一般職、専門職、現業職等のコースに区分して 雇用管理をする制度 )については局長通達が存在したが、この内容を整理した指針が制定された。一方の性の労働者のみを一定のコース等に分ける 、一方の性の労働者のみ特別な要件を課す 、形式的には男女双方に開かれた制度になっているが、実際の運用上 は男女異なる取扱いを行う といったことが、直ちに法に抵触する例 として上げられている。
女性を積極的に雇用することを考えている企業も多いと思われるが、その際には自社の制度や各種規定が、施行規則や指針に反していないかどうか今一度確認する必要がある。
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