「ビッグデータ活用へ-個人情報保護法改正案」
2015/08/07 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 個人情報保護法, その他
Suica事例
ビッグデータについては、「総務省 情報通信技術の進展により、生成・収拾・蓄積等が可能・容易になる多種多量のデータ」として平成24年政策白書でも取り上げられている。このビッグデータの活用例として有名になったのは、Suica(スイカ)に記録されたデータの利用である。
JR東日本は、日立に利用者の「乗降駅」「利用日時」「利用額」「年齢」「性別」のデータを提供したところ、世間の批判を受けた。その後、JR東日本は、「Suicaに関するデータの社外への提供についての有識者会議」を設置するなどの対応に追われた。
改正法
現行法では、有用なビッグデータの活用が難しい面があった。他方、上記事例からも明らかであるが、ビッグデータの売却等で得られる利益、データの活用によって得られる利益は企業にとって魅力的である。
また、政府も、ビッグデータの有用性を認めており、ビッグデータを利用した地域経済分析システム(RESAS(リーサス))」を2015年4月に公開している。
この流れに続いて、個人情報保護法改正に伴い、ビッグデータを「匿名加工情報」とすることで、第三者への提供が明文上認められる可能性がある。
改正案2条9項では「匿名加工情報」について規定する。「匿名加工情報」とは、個人情報に対して一定の措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。
「匿名加工情報」に該当すれば、個人情報について必要とされる規制に服することはなく、それとは異なるルールに従った取扱いが必要となる。ただ、このルールに従えば、第三者提供が可能であることが明記された点に特徴がある。
コメント
ビッグデータを上手に収拾・利用することで、現在表面化していない消費者の行動などを把握することができる。その結果、企業は、消費者に効率的なアプローチを行うことができ、消費者は、従前手に入れにくかったものを従来の生活圏の中で見つけることができるかもしれない。このように、スムーズな事業活動が可能となる未来が訪れるのではないか。改正案の動向を見守り、制定された場合、適切な運用を行えるように努める必要があるだろう。
関連事項
●参考文献
http://www.jreast.co.jp/chukantorimatome/20140320.pdf
http://www.huffingtonpost.jp/2013/07/25/jreast-suica-hitachi_n_3651050.html
●関連条文案
・匿名加工情報を作成 (改正案36条)
・安全管理のための措置 (改正案36条2項)
・情報の項目・提供方法について公表等 (改正案36条4項)
・他の情報との照合行為の禁止 (改正案36条5項)
・安全管理措置および公表の努力義務 (改正案36条6項)
●関連ニュース
本ニュースでは、2015年6月30日付「個人情報保護法改正と企業への影響」と言う記事で、「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」が衆議院で可決された旨、取り上げた(http://www.corporatelegal.jp/news_about_corp_law/?news_id=1867)。こちらは「個人情報」の意義について記載している。
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