労基署がゴムロール会社を書類送検、労働安全衛生法について
2018/08/15 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般
はじめに
大津労基署は13日、労働安全衛生法違反の疑いでゴムロール製造会社「金陽社」(東京都品川区)と滋賀工場の係長を書類送検していたことがわかりました。機械清掃の際に従業員が機械に巻き込まれ腕を切断したとのことです。今回は労働安全衛生法による安全規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、印刷機器に使用されるゴムロール等を製造販売する金陽社の滋賀工場で男性従業員(18)が機械の清掃を行っていた際に右腕を機械に巻き込まれ切断したとのことです。機械はゴムの異物を除去する装置で、男性従業員は機械のゴム投入口付近の拭き取り掃除を行っていたとされ、その際に機械の運転を停止させず安全措置を怠っていた疑いが持たれております。大津労基署は13日、労働安全衛生法違反容疑で書類送検しました。
労働安全衛生法とは
労働安全衛生法は労働災害の防止体制構築等によって職場における労働者の安全と健康を確保し快適な職場環境を促進することを目的として制定された法律です(1条)。各事業者に安全衛生管理体制構築や安全措置、危険機械等の製造許可取得などを義務付け労働災害の発生の防止を促進しております。
安全衛生管理体制
労働安全衛生法では一定の業種とその規模により安全衛生管理者の設置が義務付けられております。林業、鉱業、建設業などでは事業場の従業員の数が100人以上、製造業、電気ガス業、水道業、通信業、旅館業、燃料小売業、自動車整備業、ゴルフ場等では300人以上、それ以外では1000人以上の場合に統括安全衛生管理者が必要です(10条)。この人数に満たない場合でも、これらの業種では50人以上で安全管理者が必要となります(11条、施行令3条等)。また50人以上の事業場では人数に応じて衛生管理者も必要となってきます(12条)。
事業者の一般的責務
事業者はその業種に関わらず一般的な危険防止措置として以下の措置が義務付けられております。まず機械や器具、爆発物、発火物等の危険物について危険防止の措置が必要です(20条各号)。原料やガス、蒸気、粉塵、放射線、振動、排気など事業工程で生じる物質等から健康被害を防止する措置(22条)や通路、床面、階段等の安全(23条)、作業行動から生じる危険防止(24条)、労働災害発生の急迫の危険があるときは直ちに作業中止および退避等の措置(25条)などが求められます。
機械等への規制
ボイラー、第一種圧力容器、移動式クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフト、ゴンドラといった危険な作業を要する機械等を製造する場合はあらかじめ都道府県労働局長の許可を受ける必要があります(37条、別表第一、施行令12条)。またそれ以外の機械等でも、第二種圧力容器、ゴム等のロール機、小型ボイラー、小型圧力容器、プレス機、クレーン、防塵マスク、防毒マスク、絶縁用保護具等の設置をする場合は厚労大臣が定める規格や安全装置を必要とします(42条、別表第二)。
コメント
本件はゴム化合物を形成するロール機の異物除去装置の投入口の拭き取り掃除を機械を停止させずに行ったことにより生じた事故です。ゴムのロール機は42条に規定される機械に該当し厚労大臣指定の規格を要し、またそれ以前にも一般的な危険防止措置が必要とされます。これらの規定に違反した場合、罰則として6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が課されることになります(119条1号)。以上のように危険な製品の製造や危険を伴う事業所だけでなく、一般的な事業所でも安全確保が義務付けられております。労災事故が生じた場合には罰則が適用される以外にも安全配慮義務違反として損害賠償請求がなされることも考えられます(労働契約法5条)。特に日本語に不慣れな外国人を雇用している場合には図は張り紙等を使用して危険防止措置を講じることが重要と言えるでしょう。
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