2022年4月から全面施行のパワハラ防止法によって何が変わる?
2022/04/05 労務法務, 労働法全般
はじめに
昨今、よく目にすることになったパワーハラスメントを始めとしたハラスメント。2022年4月から改正労働施策総合推進法、通称、パワハラ防止法が全面施行されることはご存じでしょうか?施行されることは知っているがどのように変わるのかわからない、そもそもパワハラ防止法って何?という方に向けて、今回はパワハラ防止法について深堀りしていきます。
背景
パワハラ防止法は2020年に大企業を対象として先行的に施行されました。しかしながら、現在でもニュースでパワーハラスメントに関する話題が取り上げられている通り、職場でのいじめや嫌がらせ行為の防止・抑止には至っていません。令和2年度に厚生労働省、労働局に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数はおよそ8万件となっており、まだまだ職場ではパワハラに関する悩みが減少していないといえます。また、昨今のリモートワークなどの新しい働き方の導入によって、以前では感じなかったストレスを感じるようになりました。上司としても、より細やかに作業指示を与えるあまり、無自覚にパワハラに及んでしまうリスクも増加しました。結果として、部下はよりストレスを感じやすくなり、上司は無意識にパワハラに及んでしまうという環境が整ってしまったといえるでしょう。認識不足、コミュニケーション不足によってもパワハラは発生しやすいため、今後こうしたリモートワークがある程度継続していくと予測される現代ではパワハラに対する一層高い意識が求められるのは言うまでもありません。会社にとって、パワハラを放置することは、生産性の低下、人材確保の維持、職場環境の雰囲気悪化などデメリットしかありません。また、最悪の場合には従業員から損害賠償を起こされるリスクもあります。こうした背景もあり、社会全体として、パワハラ問題に取り組む必要性が生じています。
2022年4月から何が変わる?
上述のように、パワハラ防止法は、現在は大企業のみをパワハラ防止対策義務化の対象としていますが、4月1日以降は、中小企業も義務化の対象となります(これまでは努力義務期間でした)。
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パワハラの定義
パワハラを定義するのは以下の3つになります。
①職場での優越的な関係を背景としておこなわれること
②業務の適正な範囲を超えておこなわれること
③労働者の就業環境を害すること
換言すると、「職位や能力の高い人がその地位や力関係を利用して業務の範囲を超えた行為によって、身体的もしくは精神的苦痛を与えて働く環境を害すること」がパワハラとして定義されています。暴力行為はもちろんのこと、実力以上のことを要求すること、反対に実力以下の簡単な作業しか支持しないといった行為もパワハラに該当します。また、業務に必要のないセクシャリティーに関することや宗教に関することについて執拗に聞く行為もパワハラに該当します。こうした行為を抑制して、誰もが働きやすい環境を作れるようにパワハラ防止法が制定されたのです。
パワハラ防止策
厚生労働省発表のパワハラ防止指針では、企業がパワハラ防止のためにできる対策として、以下を挙げています。
①相談しやすい環境を構築する
どうしても上司からパワハラに該当する行為を受けている際には上司には相談できません。そうしたときに会社として相談窓口を設置しておくことによって、パワハラに対して適切に対処することができるでしょう。
②就業規則で明記する
パワハラは禁止です。と言葉だけで周知するのではなく、就業規則で明記することによって抑止力は増加するでしょう。
③パワハラに対して迅速に対応できる環境づくり
パワハラに対する対処の速度によって、労働者から相談がある若しくは上司からパワハラに該当する行為を抑止する効果があります。発生してしまった場合にはどのような再発防止策を企業として取るのかを明記して周知することも良いでしょう。
【外部リンク】事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】
コメント
今回はパワハラ防止法についてご紹介してきました。ダイバーシティーや個性が重視される世の中に変化しつつある中で、個人の尊厳を傷つける行為である“パワハラ”への対応指針を会社として明確に示すことが重要になります。法務の立場から出来ることとして、パワハラ防止法の周知・徹底、同法に関するコンプライアンス体制の構築、懲戒規定も含めた就業規則の改定などが考えられます。誰もが働きやすい環境を企業として提供できるよう、法務としても積極的に取り組んでいきましょう。
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