国土交通省が新たに「二つ星」を導入、運転者職場環境良好度認証制度とは
2022/09/16 労務法務, 労働法全般
はじめに
国土交通省は先月、働きやすい職場認証制度に新たに「二つ星」を導入すると発表しました。既に認証を取得した事業者のより高い水準への移行を促すとのことです。今回は働きやすい職場認証制度を見ていきます。
制度の背景
近年トラック、バス、タクシーなど自動車運送事業における人材不足が目立っていると言われております。これら自動車運送業界は一般的に時間外労働が多く、勤務時間も不規則で肉体的負担が強い業界だと思われがちだとされます。そこで国土交通省ではこれらの自動車運送事業を対象として、令和2年8月に「運転者職場環境良好度認証制度」通称「働きやすい職場認証制度」の創設を決定しました。この制度は職場環境の改善に向けた各事業者の取り組みを可視化することで業界のイメージを刷新し、求職者の自動車運送事業への就職を促進することを目的としております。
働きやすい職場認証制度の概要
本制度の対象は自動車運送事業者となっております。トラック、タクシーそして乗合・貸切を含むバス事業となります。審査要件は(1)法令遵守等、(2)労働時間・休日、(3)心身の健康、(4)安心・安定、(5)多様な人材の確保・育成となっております。これらの5分野について基本的な取り組み要件を満たせば認証を取得することが可能とされます。認証の受付、審査については国土交通省の指定を受けた「一般財団法人日本海事協会」が認証実施団体として行うこととなっております。料金は1申請あたり、審査料が55,000円(税込み)で登録料が66,000円(税込み)となっております。インターネットによる電子申請の場合は審査料が33,000円(税込み)に割引されます。審査を通ると「一つ星」の認証が与えられ、ハローワークの求人票に認証マークの表示をすることができ、認証事業者の求職者のマッチング支援を受けることがきるようになります。
二つ星認証の導入
国土交通省は新たに「二つ星」認証を追加しました。二つ星は既に一つ星の認証を受けている事業者を対象に、5つの審査要件に加えて自主性・先進性等の取り組み要件を追加して審査されます。これは既に認証を取得している事業者にさらに高い水準への移行を促すことが目的とされます。そのため一つ星を取得しないと二つ星の認証は受けられないとのことです。今年度の認証申請は一つ星が9月16日~11月15日まで、一つ星の継続申請と二つ星申請は12月16日から来年2月15日までとなっております。なお来年度からは三つ星も新たに追加する予定とされます。
認証取得助成の実施
現在一般社団法人東京都トラック協会では働きやすい職場認証制度の認証を取得した事業者に対する助成事業を実施しております。期間は令和4年9月16日~令和5年2月28日となっており、この期間中に助成金申請を提出した事業者が対象となります。助成対象は東京都内の事業者で令和4年9月16日~11月15日に認証機関に初回認証の申請を行い、審査に合格して登録証書の交付を受けた事業者となります。助成額は初回認証・登録料の合計金額のうち50,000万円とされ、東京都内に複数の事業所を有する場合は1事業所あたり5,000円(上限50,000円)が追加されます。詳しくは公式HPを参照ください(https://www.totokyo.or.jp/archives/26342)。
コメント
近年各分野で労働者不足が叫ばれておりますが、特にトラックやバスなどの自動車運送事業ではその傾向が顕著と言われております。各事業者がドライバーの求人を出してもなかなか人材確保が難しい状況とされます。また2019年に施行された改正労基法の時間外労働の上限規制が2024年4月1日から運送業と建設業でも施行される予定となっており、さらに物流業界では事業の遂行が困難となる可能性が指摘されております。そこで国交省では働きやすい職場環境認証制度の導入と二つ星、三つ星の追加を行うことにより運送業界のイメージ改善と人材確保の推進に取り組んでおります。認証を受けることによりハローワークでの認証マークの表示や求職者のマッチング支援も受けることができます。運送事業者は積極的に認証取得を検討していくことが重要と言えるでしょう。
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