北朝鮮からの不正輸入シジミを国産偽装の疑い、全国で一斉捜索
2022/12/26 コンプライアンス, 広告法務, 不正競争防止法
はじめに
北朝鮮から日本に不正に輸入したシジミを、「国産」と偽り、各地の水産会社アドを通じて販売した不正競争防止法違反の疑いで山口県の商社「アイコー」や水産物加工・販売会社「満珠水産」の役員宅、福岡や茨城、埼玉、東京の水産会社などが一斉に捜索を受けました。
報道などによりますと、警察による捜索先は全国数十か所にのぼり、警察は国内のネットワークを通じて北朝鮮に資金が流れている疑いもあるとみて、実態の解明を進めるということです。
日本政府は、北朝鮮に対する独自の制裁措置として輸出入を全面的に禁止していますが、シジミは北朝鮮から中国や韓国などを経由するなどし、日本に不正に輸入されたということです。
シジミは北朝鮮で採れたものとみられ、輸入される際には原産地をロシア産などと偽っていたといいます。
産地偽装の事例
不正競争防止法にはいくつか種類がありますが、その中で第2条第1項第20号では商品の原産地、品質、内容、製造方法などだけでなく、食品以外のサービスの質や用途、数量などについて誤った認識を与える表示をする行為や、そうした商品を譲渡などする行為を不正競争行為として規制しています。
<不正競争防止法第2条1項20号>
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2022年はシジミ以外にも、三重県の伊勢市、松阪市にある3つの流通業者が、外国産や愛知県産のアサリ合計約126トンを、「三重県産」や「熊本県産」と偽って販売していて、三重県は食品表示法に基づき、表示の是正や原因の究明などを指示したという事案が発生しました。
また、今年以前も産地偽装事件は発生していて、異なる産地のものを混ぜた米を「福島県産こしひかり」と表示して販売していた事件も報道されています。
兵庫県明石市内で米卸会社を経営していた社長らは2019年1月から「福島県産こしひかり」と単一原料米の表示しながら福島県産コシヒカリに滋賀県産コシヒカリを混ぜるなどした複合米を販売していたとされます。取引先からの刑事告発を受けて捜査していた兵庫県警の調べでは、2人は2014年から2019年3月にかけて同様の手口で偽装米513トンを大手薬局チェーンにおろし、約1億5千万円を売り上げていたとのことです。2人は不正競争防止法違反の容疑で逮捕・起訴され、神戸地裁は社長に対し懲役1年6月、執行猶予3年、罰金100万円の有罪判決を言い渡しています。
損害賠償の事例も
こうした行為で営業の利益を侵害されるなどした場合に差し止めや損害賠償請求を行うことができます。
富山県では「氷見うどん」と呼ばれる郷土料理について損害賠償請求の裁判がありました。ある会社は氷見うどんの商標を付したうどんを販売していましたが,それは富山県氷見市内で製造されておらず,その原材料が氷見市内で産出されてもいないにもかかわらず「氷見うどん」と表示をしていました。その会社に対し、別の氷見うどん製造会社が、原産地の誤認惹起行為に当たると主張し商品の販売などの差止めや廃棄、損害賠償を求めるなどしたものです。提訴された会社は「氷見」の表示は,原産地のみでなく販売地を含む表示であり,原産地についての誤認混同を生じさせるものではないし、「氷見うどん」の表示は普通名称または慣用表示に当たるため問題ないと反論していました。
しかし判決では,岡山県で製造された該当商品の包装紙などに、「氷見名物」などと記載した上、製造者として、「富山県氷見市伊勢大町・・・」と表示・販売していたため一般消費者には、氷見市において製造されているものとの誤認混同を生じさせるもので、不正競争防止法第2条1項20号に規定する原産地の誤認惹起行為に当たると判断。また「氷見 うどん」は原産地名が当該商品を一般的に示す名称になっているとまでいえず「氷見うどん」が一般的に慣習上自由に使用されている商品表示であることをうかがわせる証拠はないとしました。結果として、不正競争防止法第5条2項(不正競争行為者の得た利益を損害額と推定する規定)に基づき、約2億4000万円の損害賠償を支払うよう判決を下しました。
コメント
こうした産地偽装があとを絶たないことから、政府は食品表示法の改正などを通して規制を強めています。
加工品などを含め、表示の仕方なども定めガイドラインにまとめています。
昨今、手口の巧妙化で、実際にどこから来た食品なのかを辿るのも難しくなって来ています。そのため、今後、法務の関与していないところで、会社が食品偽装に知らぬ間に加担していたり、競争者の利益を損なうケースも考えられます。
法務として、食品偽装に関する規制内容を現場に共有すると共に、取引先企業の精査の必要性を啓蒙することも必要になってくるかもしれません。
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