コンゴ鉱山の採掘投資名目で4.5億円を不正集金疑いの男ら、出資法違反で逮捕
2023/10/17 コンプライアンス, 海外投融資, 出資法, エネルギー関連
はじめに
元本保証をうたい、コンゴ(アフリカ)での鉱物資源採掘事業への投資を持ちかけ、違法に出資金を集めたとして、金属販売会社の社長らが出資法違反の容疑で逮捕されました。
コンゴでの事業に投資を勧誘
警視庁は、10月13日、金属販売を手掛ける株式会社アドヴァンス工業(金属販売)の代表や、投資コンサルティング会社役員ら4人を出資法違反(預り金の禁止)容疑で逮捕したと発表しました。
4人は共謀のうえ、2021年4月から6月にかけて、国内の2法人と40~50代の4人に対し、元本保証をうたい、コンゴ民主共和国の鉱山の採掘事業への出資を持ちかけ、あわせて4億5500万円を集めたとされています。
コンゴでは電気自動車のバッテリーなどに必要なレアメタルの1つであるコバルトが多く採掘されており、世界のコバルト埋蔵量の半分近い400万トンが埋蔵されていると言われています。アドヴァンス工業は、2018年に、コンゴにてコバルトや銅の採掘事業を手がける現地子会社を設立。この子会社に関し、「海外企業に高値で買収される計画があり、買収が実現すれば会社の株価が倍になる」などと出資者に説明したうえで、
・「買い戻し特約」として買収後は約2倍で買い取ること
・買収が不成立に終わった場合には購入額と同額で買い取ること
などを約し、1口500万円で会社の株式を購入するよう勧めたみられています。
買収は、鉱山のボーリング調査後に行われるとの説明でしたが、買収が行われる予定だった2021年8月になっても動きはなく、会社側は買い戻しにも応じなかったということです。翌年10月、被害者が警察に相談したことから事件が発覚したといいます。
警視庁では、本件以外にも数十億円規模の不正預かりの余罪があるとみて、捜査を進めるとしています。
出資法による「預り金規制」
「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」、通称、出資法。出資法では、銀行・信用金庫・農業協同組合などの「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者」を除き、何人も業として預り金をしてはならないとの規定があります(第2条1項)。
一般大衆の財産保護および社会の信用制度・経済秩序の維持を目的とする規定ですが、具体的には、
[他の法律によって預り金をすることを認められている者以外]が、[反復継続の意思をもって]、[個人的な繋がりのない一定数以上複数の一般大衆]から、[預り金(預金、貯金又は定期積金の受入れ、その他これらと同様の経済的性質を有するもの)をすること]を禁ずるものです。
これに違反した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処され、またはこれを併科されます。(第8条3項)
また、従業員などが同罪に当たる行為をすると、法人に対しても同様の罰金刑が科される可能性があります。(出資法第9条1項3号)
過去の預り金事件
過去にも、出資法違反(預り金禁止)で逮捕された事例は少なくありません。
加工食品などへの出資名目で違法に資金を集めていたとして通信販売会社「ケフィア事業振興会」の元会長が逮捕された事件。ケフィアはヨーグルトの種菌や干し柿、りんごジュースなどの通信販売を展開し、2011年頃から会員向けに通販サイトで扱う商品への出資を募る「オーナー制度」を開始し、出資すれば半年後には10%前後の利息を上乗せした金額が配当されると説明していました。しかし実際には事業実態がありませんでした。
その結果、「高い配当金を約束し、計約1億8千万円を違法に集金、約9千万円を詐取した」として出資法違反と詐欺罪に問われていました。
判決では「会社ぐるみの犯行で悪質性が高い」として、代表に懲役7年、罰金300万円の実刑判決が言い渡されています。
コメント
今回の事件では、容疑者らの誘いを受け、法人も出資を行ったとされています。今回に限らず、経営陣等が個人的な繋がりで知り合った起業家・投資家などから勧誘され、会社として出資を行うケースが散見されます。
法務としては、経営陣等に対し、出資法や出資関連の詐欺事件などのリテラシーを高めるためのインプットを検討する必要がありそうです。
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