東京都公安委員会、都内2つのホストクラブに営業停止処分
2024/02/06 債権回収・与信管理, 行政対応, 労務法務, 行政法, 労働法全般, 外食
はじめに
昨今、ホストクラブの売掛金の回収をめぐるトラブルが大きな社会問題となっています。担当ホストが客が支払えなかった高額な飲食代を立て替え、その後に手段を選ばず客から強引に回収する例が報告されています。
こうした中、東京都の公安員会は、1月26日、都内の2つのホストクラブを営業停止の行政処分とすることを決めました。
ホストクラブ2店で法令違反
報道等によりますと、今回、営業停止処分となったのは、ホストクラブ「CROWN(新宿区歌舞伎町)」と「DEJAVU((新宿区歌舞伎町))」です。それぞれ、以下の処分が下されています。
■CROWN
[法令違反]
去年3月、18歳未満の少女を店に立ち入らせた(風営法違反)
[処分]
2月2日から120日間の営業停止
■DEJAVU
[法令違反]
去年8月、店から出ようとした女性客に対して「飲まないと帰れない」などと言って引き止めた後、付近のATMで現金を引き出させ、85万円を支払わせるなどのぼったくり行為があった(東京都条例違反)
[処分]
2月2日から80日間の営業停止
東京都ぼったくり防止条例に基づくホストクラブへの行政処分は初ということで、特にDEJAVUへの処分に注目が集まっています。
警視庁は売掛金回収トラブルにも警戒
今回、2つのホストクラブに対し営業停止処分という厳しい処分が下されましたが、先月22日には、別の店のホストが売掛金約21万円を滞納していた20代女性に対し、「売掛金が払えないなら体を売って支払え」などと執拗に要求し、路上で売春の客待ちをさせたとして、強要の疑いで逮捕されています。
このように、ホストクラブを巡っては、高額の飲食代をホストや店側が肩代わりした後に、サラ金などでの借金や売春などを強いて回収するケースが多数報告されており、警視庁は警戒を強めています。
ホストクラブの売掛の法的問題点
ホストによる強引な売掛金の回収の背景に、ホストクラブ側からホストにかけられる強いプレッシャーがあるといわれています。
ホストクラブの飲食代で客に未払いが生じた際、多くの場合、担当ホストが立替払いを行い、同額の返済について客と担当ホスト間で準消費貸借契約が結ばれます。この契約に基づき、担当ホストは客に対し、売掛金の返済を求める形になります。
そして、売掛金を回収できなかった場合、多くのホストクラブで、ホストの給料からの天引きが行われているといいます。
ホストクラブとホストは雇用契約または業務委託契約を結んでいますが、その労働者性がしばしば問題となります。
ホストの労働者性か争われた、東京地裁 平成27年7月14日判決では、「仕事の全般にわたり、ホストクラブ側から指揮監督を受けていた」として、ホストとの間で労働契約があったと判断されています。
そのうえで、売掛金未回収の際の給与からの天引きに対し、「(仮に契約上の合意があったとしても)本来、ホストクラブ側が負担すべき客への債権不回収の危険を従業員に負担させるもので、公序良俗に反し無効である」としています。
すなわち、ホストクラブとホストとの間で実態としての労働契約が認められる場合、未収金を理由とする給与天引きは無効と判断される可能性があります。
コメント
ホストクラブの運営状況を把握するため、警視庁は店への立ち入り調査や摘発などを進めています。昨年12月には、歌舞伎町のホストクラブ176店のほか、男性スタッフが接客をする「メンズコンセプトカフェ」26店、合わせて202店を立ち入り調査し、そのうちの147店舗で風俗営業法違反を確認したといいます。
特に問題視されているのが、上述の売掛金回収問題ですが、この問題に対し、ホストクラブでの売掛の規制を求める声もあがっています。実際、歌舞伎町を主管する新宿区議会でも、売掛禁止条例の申し入れが行われ議論になっています。
その一方で、禁止の対象とする「ホスト業」の定義をどのように定めるべきか、ホスト業での売掛のみを禁じた場合に、法の下の平等・営業の自由などに反しないかといった問題も指摘されています。
ホストクラブを健全な遊び場とするために、今、何が必要なのか、慎重な議論が求められます。
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