70歳まで働ける企業の割合が30%超に上昇/高年齢者雇用安定法とは
2024/12/23 労務法務, 労働法全般
はじめに
厚生労働省が12月20日に発表した「高年齢者雇用状況等報告」によると、70歳まで就業できる制度を整備するための措置を実施している企業の割合が3割を超えたとのことです。人手不足が深刻化する中、特に中小企業を中心に増加の傾向が見られます。
70歳まで働ける制度づくりは改正高年齢者雇用安定法が課す努力義務の一つとなっています。
中小企業を中心に70歳まで働ける企業が増加
今回、厚生労働省が発表した「高年齢者雇用状況等報告」。厚生労働省は、常時雇用される従業員が21人以上の企業を対象に、毎年、6月1日時点における“高年齢者の雇用等に関する措置の実施状況”に係る報告書の提出を求め、その結果を集計しています。
令和6年の「高年齢者雇用状況等報告(237,052社を対象)」によると、70歳まで働ける企業の割合が31.9%に上昇したといいます。これは、前年に比べて2.2ポイント増加した数字です。
会社の規模別にみると、中小企業では32.4%(2.1ポイント+)、大企業では25.5%(2.7ポイント+)となっています。
70歳まで就業できる制度を整えるため、各社が取り組んだ具体的な措置内容は次のとおりです。
・定年制の廃止(9,247社):3.9%
・定年の引上げ(5,690社):2.4%
・継続雇用制度の導入(60,570 社):25.6%
・創業支援等措置の導入(136社):0.1%
このうち「継続雇用制度の導入」は2.1ポイント増加しています。
特に中小企業を中心に70歳まで働ける制度の導入が進んだ背景として、
・中小企業において、若い労働者の確保が難しいこと
・技能伝承のために高年齢者の雇用を積極的に行っていること
などが挙げられています。
令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します(厚生労働省)
金融大手でも制度導入へ
多くの企業で整備が進む、70歳までの就業を可能とする制度づくり。
明治安田生命保険相互会社では、2019年に60歳から65歳に定年を延長したのを皮切りに、2021年には定年後も契約社員として70歳まで働ける再雇用制度を導入しています。
その影響もあってか、現在、60歳以上のシニア層が約1400人雇用されており、全体の13%を占めているといわれています。また、その中には70歳までの継続雇用制度で嘱託社員として再雇用された人も含まれているということです。
そんな中、明治安田生命では、さらに、2027年度から定年を70歳に延長するため、労働組合側との協議を進めていくと報じられています。
対象は約1万人の営業職員以外の内勤職で、国内の大手金融機関では初めての取り組みだということです。
明治安田生命が検討中の新制度下では、週3日勤務や時短勤務など、勤務日数や時間といった労働条件を選べるようになるといいます。また、定年前と職務が同じであれば賃金も変わらず、65歳までの給与体系が維持される方針です。
さらに、退職金の受け取り時期を選ぶこともでき、勤続年数に応じて支給額もアップする予定だということです。
改正高年齢者雇用安定法について
日本の65歳以上人口の割合は、世界最多とされています(200の国・地域中)。また、2024年に発表された「統計からみた我が国の高齢者」によると、日本における65歳以上の就業者数は、20年連続で増加し914万人と過去最多で、就業者総数に占める割合は13.5%となっています。
こうした背景から2021年4月1日に「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律です。
企業は現行法で定められている65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業確保措置をとるなど、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が追加されました。
(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
コメント
定年の引き上げや継続雇用制度の延長行う際には、退職に関する項目など、就業規則の変更が必要な場合があります。その場合には労働基準監督署長への届出も必要となります。
制度設計と共に、制度導入後、どのような手続き必要となるのか確認していくことが重要です。
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