就活生の労働条件に関する法律知識は充分か!?
2014/06/13 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
ブラック企業は、「サービス残業がある」「時間外が多い」「離職率が高い」「ノルマが厳しい」・・。 最近では就活生の間には「ブラック企業」に就職してしまうことに対する不安が広がっている。
他方、労働基準法は、雇う前には労働条件を書面で明示しなければならないこと(15条1項)、時間外労働をさせるには協定を締結していなければないこと(36条1項)など、労働者を保護するための様々なルールを定めている。就活生はそのような企業から身を守るための労働基準法等の様々な法律知識を、どれだけ持っているのだろうか。
日本労働組合総連合会は、12日、本年度の社会人1年生に対する就職活動に関する調査の発表をした。その中で全回答者(1,000 名)に対し、働く上での権利やルールを挙げ、知っているものを聞くという調査を行っている。その結果、セクハラや育休の中でも、ニュースでよく話題となった事項については認識が比較的高く、そのようなルールを知っている割合は、
■「会社は、雇う際に、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を書面にして通知しなければいけないこと」・・63.6%
■「育児休業は男性も取得できること」・・60.8%、
■「セクシュアルハラスメント(セクハラ)は女性だけでなく、男性も対策の対象となること」・・56.7%、
■「会社が、労働者に、支払う賃金(給料)の最低額(最低賃金)が法律で決められていること」・・54.5%
となった。
他方、時間外労働に関する権利やルールについて具体的にまで知っている割合は低く、
■「会社が、労働者に時間外労働(残業など)をさせる場合には、事前に協定を締結しなければならないこと」・・24.5%
■「時間外労働・休日労働の割増率」・・23.4%
と、それぞれ4 人に1 人以下(25%以下)の割合にとどまった。
また、産休・育休やセクハラに関連する項目では、男女間で認知率に開きがみられ、
■「育児休業は男性も取得できること」・・女性72.4%、男性49.2%(以下同順)
■「セクシュアルハラスメント(セクハラ)は女性だけでなく、男性も対策の対象となること」・・69.4%、44.0%、
■「子どもが1歳になるまで、育児休業を取得することができること」・・53.8%、26.0%、
■「出産を予定している女性労働者は産前6 週間(双子以上の場合は14 週間)、休業することができること」・・43.4%、21.2%
となり、いずれも男性の方が認知率は低くなった。
コメント
就活生もこれから社会に出て働く者として、世間で話題となった労働法的知識については、おぼろげながら有しているといえる。他方、残業をするために協定の締結が必要であることなど、具体的な労働基準法上のルールは、法学部で労働法を熱心に学んだ者でもない限り、きちんと認識しないまま就活をし、社会に出ているという実情が浮き彫りになった。育休・セクハラ問題など、男性が自分と直接関係がないと考えがちな問題についての認識もまだまだ甘いようだ。
違法残業など、コンプライアンス意識の低い企業は、対外的信用を失い、ひいては営業上も多大な損失を招きかねない。就活生は今後労働者として社会に出ていく者として労働法上の知識を身につけるべきであるし、企業側としてもこのような実情を認識した上で新入社員の労働法教育を徹底すべきであろう。
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