労基法上の休憩時間規制について
2018/09/25 労務法務, 労働法全般
はじめに
近年従業員、特にパートタイム従業員が労基法で定める休憩時間が十分に与えられていない、または自主的に休憩を取っていないなどの理由で労基署から是正指導を受けるケースが増えております。法規制の存在自体知らなかったという場合多いとされます。今回は労基法上の休憩時間規制について見ていきます。
労基法上の規制
労基法34条1項によりますと、使用者は労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとしています。また休憩時間は一斉に与えることが原則ですが、業務の性質上難しい場合は労使協定により変えることができます(同2項)。また接客業、通信業、運輸業などは性質上一斉付与は不要とされます。違反した場合には罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されております(119条1号)。
休憩時間とは
それでは従業員に与えなければならない「休憩時間」とは具体的にどのようなものでしょうか。判例によりますと、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を言うとしております(最判平成12年3月9日)。つまり「休憩時間」とは使用者の指揮命令下に置かれていない自由な時間ということです。しかし実際には休憩時間でも電話対応を行ったり、不測の事態には即対応することが求められている場合も多く、実質「労働時間」に当たる可能性がある例も多いと言えます。実質的に労働時間に当たり休憩時間ではないとされた裁判例を以下見ていきます。
休憩時間に関する裁判例
実質労働時間に当たるとされた有名な事例として大星ビル管理事件があります(最判平成14年2月28日)。これは月に数回ある24時間のビル管理業務で2時間の休憩時間と8時間の仮眠時間が与えられておりました。8時間の仮眠時間は仮眠室で待機となり警報が鳴るなどの際には対応が求められおりました。最高裁は、会社の指揮命令下に置かれていないと言うためには、労働から離れることが保障されている必要があるとし、警報がなれば対応することが義務付けられていたことから指揮命令下にあったとしました。また同様の事例としてマンションの住み込み管理人の就業時間以外の時間も住民から要望があれば対応が義務付けられていたとして労働時間に該当するとした例も存在します(最判平成19年10月19日)。
コメント
パートタイムや非正規も含め、従業員には一定の労働時間ごとに決められた休憩時間を与える必要があります。例えば1日8時間労働で1時間の休憩時間としていても、実際には休憩が与えられていなかったり、実質労働時間となっていた場合には8時間労働+1時間の時間外労働ということになってしまいます。休憩時間は上記のように会社の指揮命令下から離れていることが保障される必要があります。業務の性質上ある程度の移動制限は許容される場合はあるものの、顧客からの電話があれば対応したり、問題が発生すれば対応することを義務付けている場合は休憩時間に該当しないと判断される可能性が高いと言えます。また従業員が自発的に休憩を取らず仕事を続けている場合も問題であり、労基署からは是正が求められると考えられます。従業員にリフレッシュさせ、仕事の能率とミスの防止という観点からも、今一度勤怠管理を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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