マルハン駐車場火災に見る、サボり社員への会社の対応
2023/08/28 労務法務, 危機管理, 労働法全般
はじめに
営業車でパチンコをしに来たら、駐車場の火災で車が消失した。
黒い煙が立ち上る動画を投稿した男性が話題となりました。この男性は勤務中にパチンコ店に立ち寄った際に大規模火災に遭遇した営業マン。
火災後、男性の勤務先の社長の対応なども話題となりましたが、実際に勤務中に社員が仕事をせず別のことをする、いわゆる“サボり”をしていた場合、会社は処分できるのでしょうか。
150台以上が焼失
火災が発生したのは、パチンコ店「マルハン厚木北店」の立体駐車場でした。焼損面積は駐車場2階部分の約3920平方メートルで、車152台が燃えたということです。
目撃者などの話や、他の車のドライブレコーダー映像などで、火元は2階に止めていたディーゼル車とみられていて、エンジン下部付近から火が出ていたということです。
マルハンによりますと、立体駐車場の 2 階以上は安全の確認が取れるまで立ち入り禁止としていることから23日時点で198 台の車両が立体駐車場から出せない状況となっているということです。安全の確認が取れた駐車場1階のみ、8月22日より車両の移動を開始しています。
この立体駐車場では消防設備や防火対象物について1年に1度定期点検を行っており、直近では4月14日に実施されていました。また、今回の火災発生時も、正常に作動していたということです。さらに、消防訓練も年2回定期的に行われていて、一番最近では4月20日に実施していたといいます。
報道などによりますと、火災が大規模に及んだ原因として、
・車に石油製品の樹脂が多く使用され燃えやすかったこと
・当時2階の駐車スペースがほぼ満車であった(155台が駐車)ことに加え、立体駐車場自体が開放型で建物内に風が入りやすかったこと
などから火の回りが早くなったことが挙げられています。現在、消防などが詳しい火災の原因を調べています。
営業車がパチンコ店火災で焼失
この火災で、ある自動車買取店の営業マンが注目されました。
「仕事サボってパチンコしてたらマルハンの駐車場火事になって営業車燃えて詰んだ」
SNS「X」(旧Twitter)に投稿された、こちらの投稿。勤務中にパチンコ店に立ち寄り、楽しんでいたところ、火災に遭遇しました。
突然の火災で乗っていた営業車を失った男性。男性はクビを覚悟し、仕事中にパチンコをしていたことを正直に話し社長に謝罪したといいます。すると社長は「営業車1台失ったけれども、会社の宣伝が出来るなら広告費だと思って今回の件は目を瞑る」と返答し、その上で、もし宣伝ができなければ弁償するようにと伝えたということです。
男性はSNSで自身の会社について投稿。社長の言葉も話題となり、取材依頼などが殺到したといいます。これにより、勤務する自動車買取店には新規の問い合わせが多数寄せられ、対応に追われているということです。
サボっている社員を処分できる?
今回のようにオフィス外で営業を行なっている場合だけでなく、コロナ禍で広まったテレワークや在宅勤務中などに、副業をしていたり、オンラインショッピングや長めの休憩、飲酒や睡眠をとる社員が一定数いると言われています。
実際に勤務中に、こうしたサボり行為が行われていた場合、会社は懲戒処分を加えることができるのでしょうか?
一般的に、就業規則に、「就業時間中の職務専念義務」や、「会社備品の私的な利用の禁止」等を定め(いわゆる「服務規律」)、こうした服務規律への違反も懲戒事由として挙げている企業が多いと思います。
そのため、サボり社員への懲戒処分を検討する際も服務規律違反に該当するか否かという点から検討することになります。
社員が行ったサボり行為が、就業規則内で具体的に挙げられていた場合には処分しやすくなりますが、抽象的な規定しか該当するものがない場合には、当該行為が業務に及ぼす支障の程度、会社への損害発生の有無などを慎重に検討する必要があります。
具体的には、サボり行為が原因で商談やミーティングに参加しない、酔っ払っていてコミュニケーションが円滑に取れないといったケースなどでは、懲戒処分の対象となる可能性があります。一方で、私物スマホの閲覧、コーヒーを飲む、テレビ・動画を見ながら業務にあたるなどのケースについては、業務への甚大な支障や具体的な損害を立証できる状況でない限りは、厳重注意に留める(次回以降は懲戒処分とする旨を合わせて通告する)のが現実的かもしれません。
いずれにせよ、懲戒事由となるサボり行為を出来るだけ具体的・網羅的に定めておくこと、それぞれの行為に対する処分の内容(減給や解雇等)を明記しておくことが重要になります。
コメント
X(旧Twitter)の拡散力の大きさ、男性が正直に社長に打ち明けたことなどから、映画のようなユーモラスな展開を迎えましたが、今回、男性は社用車を私的に利用してパチンコ店を訪れ、勤務時間中に遊興にふけり、それにより社用車が消失するという具体的損害が会社に発生していただけに、多くの企業で懲戒事由に該当するケースだったのではないでしょうか(この男性が懲戒されたか否かは、現時点で不明です)。
男性の投稿が多くの注目を集めた特殊な状況下、会社側が難しい対応を迫られたことは想像に難くありません。法務として、これを機に、従業員のサボり行為により会社に損害が発生した場合の対応について整理しておくのもよいかもしれません。
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