鉄筋加工会社が在留資格更新手続き怠り賠償命令、技能実習計画とは
2023/10/02 労務法務, 外国人雇用, 労働法全般, 入管法
はじめに
大阪府の鉄筋加工会社で技能実習生として働いていたベトナム人男性(25)が、在留資格の更新に必要な手続きをか会社側が怠ったため実習を続けられなかったとして賠償を求めていた訴訟で大阪地裁は約330万円の賠償を命じていたことがわかりました。男性は入管に収用されていたとのことです。今回は技能実習制度の技能実習計画について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、2018年7月から寝屋川市の鉄筋加工会社で勤務していた男性が2年目以降の実習を希望するも、会社側が手続を委任していた監理団体が期限であった19年3月までに申請せず更新ができなかったとされます。会社側は男性に帰国を指示しましたが、男性は日本にとどまることを希望し会社を離れて友人宅に身を寄せていたとのことです。その後入管に50日間収容されておりました。男性は会社側の対応が技能実習法に違反するとして更新されていれば得られた給与分と慰謝料を求め提訴しておりました。
技能実習生受け入れの手続き
外国人技能実習生を受け入れる手続きの流れはおおむね次のとおりです。(1)技能実習の職種や人数、国などを検討し受け入れ計画を策定、(2)送り出し国の技能実習生送り出し機関に求人依頼、(3)技能実習計画を作成死外国人技能実習機構に認定申請、(4)認定通知書の交付と厚労省・法務省への報告、(5)法務省に在留資格認定証明書交付申請、(6)送り出し国にある日本大使館へビザ申請、(7)日本に入国、(8)入国後1ヶ月間の入国後講習を経て実習実施企業に配属となります。この技能実習生受け入れは監理団体が受け入れを行い加盟企業が技能実習を実施する場合と、受け入れる企業の海外現地法人などの従業員等を受け入れる場合に分かれております。
技能実習計画書とは
技能実習生を受け入れる際には技能実習計画書を作成する必要があります。技能実習計画書はそれぞれの実習生ごとに作成し外国人技能実習機構の認定を受けます。この技能実習計画書は技能実習1号、2号、3号の区分に応じて作成する必要があり、記載事項は申請者氏名・名称、住所、法人役員の氏名と住所、実習を行う事業所、技能実習生の氏名と国籍、技能実習区分、技能実習の目標と内容および期間、技能実習実施責任者、監理団体の名称と住所、技能実習生の待遇などとなっております。技能実習計画書の認定基準としては、(1)修得予定の技能が本国で修得困難な技能であること、(2)目標と内容が技能実習区分に応じて定められた基準に適合していること、(3)技能実習期間が1号は1年以内、2号・3号は2年以内であること、(4)技能実習を終了するまでに技能検定等によって評価を行うこと、(5)実習生への報酬額が日本人従業員と同等以上であることなど11項目となっております。
技能実習2号への移行
技能実習1号での在留期間は1年となっており、その後2号、さらに3号と移行することができます。2号・3号での在留期間は2年です。技能実習1号から2号への手続きとして、まず実習生が技能検定または技能評価試験に合格する必要があります。この試験は1号の期間満了の2ヶ月前が推奨されており、入国から8ヶ月目頃に受験することとなります。そして2号用の技能実習計画書を作成し認定を受ける異ります。この認定は1号の期間満了3ヶ月前までに行う必要があり、審査に2~5週間かかるとされております。計画書の認定がなされたら実習生が働いている地域管轄の入国管理局に在留資格の変更申請を行います。この審査には約1ヶ月を要するとされ、注意が必要です。
コメント
本件でベトナム人男性は2年目以降も実習を希望したことから2019年3月までに2号への移行手続きをする必要があったとされます。しかし実施企業側が委任した監理団体が手続きを行わず、在留期限が切れたとされ大阪地裁は約330万円の賠償を命じました。以上のように技能実習は職種にもよりますが、在留期間1年の技能実習1号から2号、3号へと移行することができます。その場合は在留期限の3ヶ月前までに技能実習計画の認定申請や、実習生の受験などかなりタイトなスケジュールとなります。これを怠ると実習生は帰国を余儀なくされることとなります。技能実習生を受け入れる際にはどのような手続きが必要か、また認定要件を満たしているかを慎重に確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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