ベトナム人4人を使用の会社社長を入管難民法違反で逮捕、不法就労助長とは
2024/10/02   労務法務, 労働法全般, 入管法

はじめに

兵庫県警と伊丹署が30日、在留期間が切れたままのベトナム国籍の男4人を就労させていたとして、大阪市平野区の解体会社社長を逮捕していたことがわかりました。ベトナム国籍の男らも不法残留で逮捕されたとのことです。今回は入管難民法が規制する不法就労助長について見直していきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、ベトナム国籍の男4人は23~41歳で、逮捕容疑はそれぞれ2018~21年に来日し、在留期間を1年7ヶ月~5年11ヶ月超過していながら、在留期間更新や変更をしないまま在留し続けた疑いがあるとされます。大阪市平野区の解体会社社長の男は4人が不法残留と知りながら同社で解体作業員として従事させていたとのことです。兵庫県警組織犯罪対策課によりますと、ベトナム国籍の4人は交流サイト(SNS)で知り合い、大阪市内や伊丹市内の現場で働いていたとされております。

 

入管難民法による規制

 「短期滞在」や「研修」などの在留資格で在留している外国人は就労が認められないこととなっております。また在留期間を超えている場合や、上陸許可を受けることなく滞在している外国人も同様です。まず在留資格を持たない、または在留期間を超過して在留している場合は不法滞在となり3年以下の懲役・禁錮、または300万円の罰金が科され、退去強制の対象となります。そしてこのような不法滞在者が就労した場合は不法就労となり、雇い入れた事業主やそれを斡旋した者等は不法就労助長罪となります。罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金が規定されております(入管法73条の2)。また集団密航者を運んで来た者からその密航者を収受して支配管理化においたまま不法就労させている場合は別途5年以下の懲役または300万円以下の罰金が規定されており、営利目的であった場合は1年以上10年以下の懲役および1000万円以下の罰金とされております(同74条の4)。

 

不法就労助長

 厚労省東京労働局によりますと、「不法就労」とは、(1)我が国に不法に入国・上陸したり、在留期間を超えて不法に残留したりするなどして、正規の在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動、(2)正規の在留資格を持っている外国人でも、許可を受けずに与えられた在留資格以外の収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動をいうとされております。つまり不法就労には不法滞在で就労している場合、就労不可の外国人が就労している場合、認められていない業務での就労を行っている場合が挙げられます。そしてこのような就労をさせたり、斡旋した場合に不法就労助長罪となります。入管法73条の2第2項によりますと、これら不法就労に該当することについて「知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない」としております。つまり故意だけでなく過失がある場合も違法となるということです。

 

外国人を雇用する際の注意点

 上記のように不法滞在や在留許可に違反した外国人の就労、およびその使用は違法となります。そこで外国人を雇用する際にはまず、在留カードで問題が無いかを確認することが重要です。在留カードには氏名や生年月日、写真、国籍、住居地、在留資格、就労制限の有無、在留期間、許可の種類、カードの有効期間などが記載されており、裏面には届け出年月日や資格外活動の可否と条件などが記載されております。これらの情報で、本人かどうかの確認、在留期間の確認、就労の可否、資格外活動許可の有無の確認が重要です。就労の可否について、永住者や日本人配偶者、永住者の配偶者、定住者等の在留資格を持つ場合は無制限に就労が可能です。外交や公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営管理、法律、会計業務、医療、研究、教育、技術、工業、特定技能、技能実習等は定められた活動以外が不可となります。そして文化活動、短期在留、留学、研修、家族滞在の在留資格では就労は認められません。

 

コメント

 本件では既に在留期間が切れており不法残留状態となったベトナム国籍の男4人を、大阪市の解体会社が就労させていた疑いが持たれております。同会社の社長は不法残留であることを知っていたとされており、いずれも容疑を認めているとのことです。以上のように入管法では日本に滞在する外国人の就労については厳格に規制しております。在留資格によっても就労できる業種に制限があったり、そもそも就労自体が不可な場合もあります。このような外国人を使用した場合、またはその斡旋をした場合は不法就労助長として重い罰則が置かれております。また上でも触れたように同罪は過失の場合も含まれ、不法就労に当たらないよう慎重に確認した場合でなければ違法となります。外国人を雇用している場合は、これらに問題がないか今一度チェックしなおしておくことが重要と言えるでしょう。

 

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