厚労省“女性管理職の比率”公表義務化へ、対象は従業員101人以上で検討
2024/11/27   労務法務, 行政対応, 労働法全般, 女性活躍推進法

はじめに


厚生労働省が、女性管理職比率の公表を企業に義務づける方向で調整中です。対象となるのは、従業員101人以上の企業で検討されています。労使などでつくる審議会での議論を経て、年内にも取りまとめられるということです。

また、改正女性活躍推進法施行に伴い、2022年7月からは一定規模以上の企業に対し、男女の賃金格差を情報公開するよう定められていますが、この対象企業も今後拡大する見込みです。

女性活躍を後押しする政策が加速する中、企業の対応が迫られています。

 

女性管理職の割合公表へ


今年8月に帝国データバンクが公表した調査結果によると、日本企業の女性管理職(課長相当職以上)割合の平均が 10.9%に上昇したということです。調査開始以来、初めて10%を超える結果となりました。

また、「女性管理職30%」を達成している企業割合は 11.4%となりました。こちらも初めて10%を超え、上昇幅も過去最大となっています。国内において、少しずつ女性の管理職登用が進んでいることがわかります。

一方で、欧米諸国では女性管理職割合の平均がすでにおおむね30%を超えており、いまだ国際的に見ると低い水準であることがわかります。

そこで、政府は東証プライム市場に上場する企業の女性役員割合の目標値を、従前の「2030年までに30%以上」から「2025年までに19%」に引き上げています。

加えて、女性管理職登用をさらに加速させるため、企業に対し、女性の管理職比率の公表を義務づける方向で調整しているということです。

対象企業の従業員数は「101人以上」で検討されており、厚生労働省は審議会での議論も行った上で、年内にも取りまとめる方針です。

 

男女の賃金格差の情報公開も


厚生労働省は管理職登用の推進のほかにも政策を実行しています。その一つが2022年7月8日に施行された、改正女性活躍推進法です。

従前より、女性活躍推進法では、【Ⅰ 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】と【Ⅱ 職業生活と家庭生活の両立】という二つの区分に関する情報公表を求めていましたが、
改正法では、【Ⅰ 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】の区分に新たな項目として、「雇用する男女の賃金差異」が追加されています。

この「雇用する男女の賃金差異」の報告義務が課されているのは、常時雇用される労働者が301人以上の事業主です。

男女の賃金の差異を公開することで、女性の登用や継続的な就業具合を知る効果があると考えられています。

厚生労働省が発表した「2022年賃金構造基本統計調査」結果によると、一般労働者の男女間賃金格差は75.7(男性の給与水準を100として計算)となっています。2年連続での格差縮小となった一方で、OECD加盟国の平均が88.4となっていることに照らすと、諸外国と比較し、我が国の男女間賃金格差は、いまだ大きい状況にあるとわかります。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2023年9月に、こうした賃金格差を生んだ要因の分析結果を公表していますが、

(1)女性の勤続年数が男性より短い
(2)給与水準が高い専門職に女性が少ない

といった課題が浮き彫りになったといいます。同時に、こうした要因だけでは「説明できない格差」も浮かび上がったとされています。

この点について、専門家は、無意識の偏見などからくる男女の業務分担(男性的な業務・女性的な業務)が、その後のスキル評価や仕事の配分、教育機会などに影響を与え、成長格差を生み出しているのではと指摘しています。

女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ女性の活躍に関する「情報公表」が変わります(厚生労働省)

 

コメント


厚生労働省は、従業員101人以上の企業に対し、「女性管理職比率」に加え、上述した「男女の賃金格差」についても公表義務を課す方向で検討しています。

そこには、求職者が就職・転職先を選ぶ際の参考情報として役立ててもらう意図もあるといいます。

各所で人手不足が叫ばれる昨今、女性登用の加速と社内における男女間格差の解消が採用を大きく左右する要因となりそうです。

 

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