企業の営業秘密の漏洩 未遂も処罰へ
2014/11/25 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 不正競争防止法, その他
事案の概要
最近、ベネッセコーポレーションの顧客情報漏洩など、企業の持つ営業秘密の不正入手を巡る事件が相次いで発生しているが、経済産業省は、企業の営業秘密の漏洩を防ぐため、不正競争防止法の見直しを行うことにした。
具体的には、情報の取得に失敗した場合の未遂罪も新たに刑事罰の対象とし、個人に科される罰金の上限を1000万円から5000万円に引き上げ、懲役の上限も海外に情報漏洩した場合については10年以下から15年以下に重くする。また、企業に科される罰金の上限も3億円から6億円に引き上げる。
改正法案は来年(2015年)の通常国会に提出される見通しである。
背景
経済産業省が不正競争防止法の改正の方針を示した背景には、近年、日本企業の情報が外国企業に不正流出する事例が増えていることがある。例えば、今年(2014年)3月には東芝が、半導体メモリーの研究データを不正取得されたとして、韓国の半導体大手SKハイニックスを提訴し、2012年4月には新日鉄(現在は新日鉄住金)が、最先端の鋼板の技術を不正取得されたとして同じく韓国の半導体大手SKハイニックスを提訴しているが、これらの事例は氷山の一角であるとも言われている。
経済産業省には、罰則を強化することによって、日本企業の競争力の確保を法制面から後押しする狙いがあると見られる。
コメント
今までは、営業秘密が流出した場合に刑事罰を科すには、秘密を不正利用した証拠が必要とされていた。これに対し、未遂罪の処罰が規定されれば、情報取得に失敗した場合であっても、情報を盗もうとした痕跡があれば処罰することが可能となる。
昨今の営業秘密の流出の事例を見れば、日本の企業を守るために法改正することは必要であるといえる。特に、日本は、諸外国に比べて海外への営業秘密の漏洩に対する罰則の強化が遅れており、取り締まりを行うのが難しい状況にあったことから、今回の見直しが行われれば、取り締まることが今までより容易となる。
一方で、情報流出が相次いで起こっている背景には、経営不振に陥った日本企業のリストラにより、大量の技術者が転職を迫られてきたということがある。経済産業省が2013年にまとめた「人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書」の関連資料によれば、日本企業の情報流出に関わった情報漏洩者は、約50%が中途退職者であった。
営業の秘密の流出を防ぐためには、中途退職者の退職後の秘密保持契約や競業避止契約を結んでおくことも重要である。しかし、転職をした技術者の中には、在職中の待遇の不満から転職をする者もいることから、成果に見合った評価制度を確立することも必要となる。また、リストラされたことを恨みに思い情報を流出させる者もいると思われることから、安易に全従業員一律のリストラを実施するのではなく、十分な退職金の支給や再就職先の支援等、企業はできる限り退職者の理解を得るための努力を行う必要もある。
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