うちの会社は大丈夫?パートタイム労働法改正施行開始!!
2015/04/14 労務法務, 労働法全般, その他
近年、経済情勢などの影響もあり、パートタイム労働者が増加しています。現在、就労人口全体の30%をパートタイム労働者が占めており、正社員よりパートタイム労働者の方が多い企業も数多く見られます。そして、企業活動の実態を見てみると、担当業務の内容など正社員となんら変わらないパートタイム労働者も多いようです。こうした状況の下、4月1日にパートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が改正施行されました。
※なお、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「臨時社員」「準社員」など呼び方はいくつかありますが、 「正社員より所定労働時間が短い労働者」であれば、本法律で言うパートタイム労働者に該当します。
改正法のポイント
①労働条件の文書交付・説明義務
事業主が、パートタイム労働者を雇い入れた場合には、労働者に対して実施する雇用管理の内容について説明しなければなりません。雇用契約書・労働条件通知書や就業規則などに記載して明示しておくなどの措置が求められます。また、事業者は、パートタイム労働者から待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求められた場合に、その説明をする義務もあります。この説明を求めたことを理由としてパートタイム労働者に対して不利益的な取扱いをすることも禁止されています。
(雇入れ時の説明内容の具体例)
・賃金制度の仕組み
・教育訓練や福利厚生施設の利用が可能か
・正社員転換推進措置の有無及びその内容
(待遇の決定に当たって考慮した事項の説明内容の具体例)
・賃金を決定するに当たって考慮した事項とその評価について
・教育訓練や福利厚生施設が利用できない理由
・正社員への転換推進措置の決定に当たり考慮した事項
②均等・均衡待遇の確保
広く全ての短時間労働者を対象とした待遇の原則の規定が創設されました。その内容は、事業主がパートタイム労働者と正社員の待遇を相違させる場合は、その待遇の相違は、職務の内容・人材活用の仕組み・その他の事情を考慮して不合理と認められるものであってはならないとするものです。
また、(1) 職務内容が正社員と同一、(2) 人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一のパートタイム労働者であれば、正社員との差別的な取扱いが禁止されます。改正前は無期の雇用契約を締結しているパートタイム労働者に限定されていましたが、改正により有期のパートタイム労働者にも適用されるようになりました。具体的には、上記の条件に該当するパートタイム労働者の場合には、就業時間や勤務成績による差異は許容されますが、家族手当や通勤手当のように一般的に就業時間の長短に関わりなく支給されるものについては差別的な取扱いは禁止されることになります。
③正社員への転換の推進
正社員への転換を推進するための措置を事業者へ義務付けています。具体的には、正社員の募集を行う際のパートタイム労働者への周知、新たに正社員を配置する場合のパートタイム労働者への応募の機会を付与、正社員への転換のための試験制度などが挙げられます。
④「相談窓口」の開設・周知
パートタイム労働者を雇入れた場合に、事業主が明示しなければならない事項に「相談窓口」が追加されました。そこで、事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないことになります。具体的には、相談対応者や部署をあらかじめ決定しておき、労働者側に周知しておく必要があります。
⑤実効性の確保
改正法にはパートタイム労働者に関する雇用管理を改善する規定が示されており、規定に違反したまま放置している事業主に対しては、厚生労働大臣による改善勧告が行われる場合があります。そして、その勧告に従わない場合は、厚生労働大臣はその事業主の名前を公表することになります。また、パートタイム労働法で定められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした事業主には、20万円以下の過料に処せられることになります。公表や罰則など具体的に事業主の不利益が生ずるケースがあることから、勧告や報告に関しては特に注意して対応しなければなりません。
パート労働ポータルサイト
今回の改正法施行に関して、事業者が最も気になるポイントは自社の現在の雇用管理が改正法に違反していないかという点だと思います。厚生労働省では、パートタイム労働者に対する雇用管理や正社員との均等・均衡待遇の現状と課題を分析できるツール(エクセルシート)を公開していますので、こちらを活用してみてはいかがでしょうか。
パート労働ポータルサイト
コメント
パートタイム労働者に対して、雇用管理を適切に行い、正社員との働き方の差異に応じた均等・均衡待遇を実現させることは、パートタイム労働者の仕事に対するモチベーションや自社への定着率を高めるために重要なことです。改正法の施行を機に、パートタイム労働者の労務管理などを今一度見直し、自社の状況を検証し対応していきましょう。
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