人材派遣会社社長を書類送検、最低賃金について
2020/06/11 労務法務, 労働法全般, 人材
はじめに
社員に3ヶ月間所定の賃金を支払っていなかったとして、福岡市の人材派遣会社社長が書類送検されていたことがわかりました。労基署への相談で発覚したとのことです。今回は最低賃金法と労働基準法の賃金に関する規定を見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、昨年12月、福岡市の人材派遣会社「ラビラボ」の男性従業員から賃金がもらえていないとの相談が労基署に寄せられ調査したところ3ヶ月間賃金がまったく支払われていなかったとされます。また別の従業員には3ヶ月間、福岡県の最低賃金に満たない賃金が支払われていたとのことです。同社社長の男性は最低賃金法違反の疑いで書類送検されております。労基署の調べに対し「資金繰りが難しかった」などと話しているとのことです。
最低賃金法による規制
最低賃金法によりますと、使用者は、労働者に対し最低賃金以上の賃金を支払わなければならないとしています(4条1項)。そして使用者との労働契約で最低賃金に満たない賃金を定めても、その部分については無効とされ、最低賃金での賃金の定めをしたものとみなされます(同2項)。また使用者は最低賃金の概要を常時作業場の見やすい場所に掲示、またはその他の方法で労働者に周知させる必要があります(8条)。最低賃金に違反した場合は50万円以下の罰金、周知義務に違反した場合は30万円以下の罰金となります(40条、41条1項)。
最低賃金
最低賃金法の定める最低賃金は地域別最低賃金と特定最低賃金に別れます。地域別最低賃金とは地域ごとの労働者の生計費や賃金、通常の事業の賃金支払い能力などを考慮して地域ごとに厚生労働大臣または都道府県労働局長が定めます(9条1項、2項)。この地域ごとの最低賃金を定めるに際しては労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう配慮されます(同3項)。特定最低賃金は地域ごとに特定の産業別に定められた最低賃金です。これらが同時に適用される労働者の場合は高い方の最低賃金が適用されることとなります(6条)。
労基法による規制
賃金については労基法でも規制がなされております。労基法24条1項によりますと、賃金は通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならないとされております。これは賃金支払い5原則と呼ばれ、現物等ではなく通貨で、代理人などの中間人を介せず直接本人に、差し引いたりせず全額を、必ず月に1回以上、一定の期日を定めて支払う必要があるというものです。違反した場合には30万円以下の罰金となっております(120条1項)。
コメント
本件でラビラボ社は一部の従業員に対し3ヶ月間福岡県の最低賃金未満の賃金しか支払っていなかったとされます。またさらの別の従業員には3ヶ月間全く賃金が支払われていなかったとも言われております。この場合最低賃金法だけでなく労働基準法にも違反することとなると考えられます。以上のように最低賃金は地域別に定められております。ちなみに東京都は現在1013円となっており平成30年度のもの(985円)に比べ28円増で日本で一番高額となります。また現在コロナウイルスの影響でリモートワークが多く取り入れられておりますが、この場合の最低賃金は労働者の自宅所在地ではなくもとの会社所在地のものとなります。今一度自社の最低賃金と社内での周知が行われているかを確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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