不当解雇に金銭解決の制度導入を提言
2015/06/16 労務法務, 労働法全般, その他
概要
政府の規制改革会議(内閣総理大臣の諮問を受け、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制改革を進めるための調査審議を行い、内閣総理大臣へ意見を述べること等を主要な任務とする審議会)がまとめた答申案の内容が分かった。
その答申案には、裁判で解雇が不当と判断された場合に、労働者が申し出れば金銭補償で退職を受け入れ、紛争を解決する制度の導入が記載されている。この制度は、多様な働き手が社会に貢献できる環境を作り、一人ひとりの労働価値を高めることを目的とした雇用分野の規制改革の一つとして提案されており、労使双方が納得する解決制度の多様化を図るねらいである。
現行制度下での問題点
現行の法制度の下では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労働契約法16条)には、権利濫用として解雇は無効と規定されている。解雇が無効と判断されたとしても、職場復帰についての最終的な判断は企業が行うため、職場復帰できないという問題に加え、労働者が労働契約は継続しているとして賃金の支払いを求める訴訟を提起する場合も少なくない。こういった問題を早期に解決する手段の1つとして、今回の制度が注目される。
また、労働紛争の9割以上は金銭による解決がなされているが、その金額は、示談・労働審判・裁判等のうちどの手続を経るかによってまちまちであるのが現状である。金銭解決制度を導入しているドイツでは18ヶ月分の賃金が上限とされており、今回の制度によって一定の基準が示されるものと予想される。
コメント
規制改革会議提案の制度は不当解雇との裁判所の判断だけではなく、労働者の申し出も要件としている。これは、企業からの一方的な金銭的解決を防止して、労働者の権利にも配慮したものと考えられる。労使双方が納得する解決制度という制度趣旨にかなうものである。
また、同制度は、諸外国においては既に構築されており、日本もこれらの国の制度運用状況を調査研究した上で実施していく方向に舵を切った。外国企業が日本に進出する際には、自国との法制度の違いは大きな障害となる。今回の提案は法的障害を取り払い、外国の企業が日本に進出しやすい環境を作ることにもつながり、雇用が生まれれば日本経済の活性化にもなるものと期待される。
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